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平成27年度 淡海生涯カレッジ 甲賀校

更新日:2015年12月22日
平成27年度「淡海生涯カレッジ甲賀校」の講座実施レポートをお届けします。

郷土の知恵と技に学ぶ〜新しい自分づくりとまちづくり〜

期間:平成27年6月13日(土)〜11月21日(土)

(1)問題発見講座

講座 日時 テーマ 講師
第1講 6月13日(土)
10:00〜12:00
技芸の伝統から地域を見直そう
〜環境・生活・文化・交流〜
立命館大学客員教授
金井 萬造 氏
第2講 6月17日(土)
10:00〜12:00
焼き物の魅力を知る
〜地場産業「信楽焼」について〜
滋賀県立陶芸の森館長
川口 雄司 氏
第3講 7月11日(土)
10:00〜12:00
飯道山が結ぶ地域の輪 飯道山観光協会相談役
山田 耕造 氏
第4講 7月25日(土)
10:00〜12:00
歴史ある寺社と華麗な建築美 甲賀市歴史文化財課参事
長峰   透 氏

第1講  技芸の伝統から地域を見直そう (会場:甲賀市甲南図書交流館)

講義のようす

 開講式後、ボランティアグループ「紙ふうせん」による『大人のおはなし会』があり、文字を離れて耳から入ってくるひと味違った感動をいただきました。続いて、金井氏(立命館大)による講義があり、「現在の社会状況をどのように捉えるか」を観光分野(農業・機械・情報・脳科学革命の枠組み)からお話しいただきました。「技芸」に的が絞られ、価値の高い技芸の作品・製品ができても、地域でその価値を認め活かす状態を創っていく取組みが必要であることを強調されました。受講生に向けて、歴史・伝統に着目した新しい体験を通してまちづくりに関わること、新しいキャリア形成としての創造的な取組みの期待が述べられました。
 受講生の講座記録には、自分を一層磨いていきたい、まちづ くりへの貢献も考えたい旨の感想が多く記されていました。

第2講  焼き物の魅力を知る 〜地場産業「信楽焼」について〜 (会場:県立陶芸の森創作研修館)

講義のようす

 信楽陶芸の森創作研修館にて信楽焼の歴史や特徴・現状について、館長の川口氏によるPPを使った講義がありました。その後、学芸員の説明を聞きながら登り窯と穴窯の現場を見学、外国の陶芸家との会話、最後は、陶芸館で開催中の「岡本太郎の言葉とともに展」を鑑賞しました。
「土・祈り・イマジネーション…」のキャッチフレーズ通り、岡本太郎氏の感性を垣間見る刺激的な講座となりました。
 窯をはじめて目にされた受講生から火色や灰かぶりなど、作品への知識豊富な受講生まで、多種多様な方がおられましたが、講義が大変わかりやすく、もっと聞きたかったとの声が多く聞かれました。アート性の追求とビジネスとをどのように折り合わせていくかで思考を深めることのできる良い機会となりました。          

第3講  飯道山が結ぶ地域の輪 (会場:貴生川公民館)

講義のようす

 飯道山山麓に広がる貴生川地区。そこで組織されている飯道山行者講の取組みを聞きました。古くから深い繋がりをもつ延暦寺との関係や掌を合わす文化を大切にしていることを紹介されました。
 また、長年の歴史をもつ燈籠流し・夏まつりの様子を説明され、 先祖の力も借りてまちづくりを行っていることを強調されました。後半は、戦国時代、深い慈悲の心で、地域住民のために尽くされた「木食応其上人」の追悼式の様子を説明されました。
 まちづくりの一環として取組まれている忍者検定や飯道山ハイキングの様子も紹介していただきました。
 受講生は、豊富な資料をもとに語られる行者講のまちづくりへの取組みに感心しきりといった様子でした。

第4講  歴史ある寺社と華麗な建築美 (会場:かふか生涯学習館・油日神社・櫟野寺)

講義のようす

 かふか生涯学習館に集合し、長峰氏から油日神社と櫟野寺の歴史的背景と建造物の特徴についての説明を受けました。その後、油日神社へ市福祉バスで移動し、国指定重要文化財である本殿・拝殿・楼門・東西の廻廊を拝観しました。拝殿以外は足利末期のものですが、なぜ建物が揃って温存されたのかを織田信長との関わりで学習しました。
 資料館では、県指定有形文化財の福太夫面やずずい子等を解説を聞きながら見学しました。
 櫟野寺では、住職より寺の縁起を聞き、その後、日本最大坐佛観音である「木造十一面観世音」の特別拝観を許されました。受講生一同大きな感銘を受けました。比叡山の開祖伝教大師が観音様を安置されたことや坂上田村麻呂公が鈴鹿の山賊討伐・平定に観音様のお力を借り られたこと等、大変興味深いお話も聞くことができました。


(2)実験・実習講座

講座 日時 テーマ 講師
第5講 8月8日(土)
10:00〜12:00
焼き物づくりに挑戦
〜陶製「表札」の作成〜
県立信楽高等学校
杉村 大樹 氏
第6講 8月29日(土)
10:00〜12:00
皮革工芸を楽しもう
〜皮革工芸によるオリジナルの小物づくりに挑戦しよう〜
県立水口東高等学校
縄田 美夏 氏
第7講 9月5日(土)
9:30〜11:30
障がい者理解を深めるために
〜擬似体験プログラムを使って〜
県立三雲養護学校
寺岡ゆみ子 氏
第8講 9月12日(土)
9:30〜11:30
和のおもてなし
〜家庭でできる季節の和菓子づくり〜
県立石部高等学校
三好 有佳  氏

第5講 焼き物づくりに挑戦 〜陶製「表札」の作成〜 (会場:県立信楽高等学校)

講義のようす

 「こんなおもしろい体験をしたことがありません。楽しかった。」の感想に代表されるように、受講生には正に衝撃的な焼き物づくりとの出合いとなりました。粘土とステンドグラスを素材とした表札づくり。講師先生の適切な事前準備と的確な指示・説明、そして、受講生の心情をおもんばかった温かい声かけに、一同、「ものづくり」の醍醐味を十分に味わいました。「2時間の実習、とんでもないと思っていましたが、先生の進行が上手く、興味を維持したままで最後まで進みました」、「先生の懇切丁寧な指導で…」「指導スタッフの皆さんの熱心な指導で…」等、講師先生への感謝の気持ちが数多く寄せられました。
 この日の実習で、「粘土に親しみを」・「自分表現としての作陶」・「生活の中に陶芸を」・「新しい商品開発を」の声も出て、信楽焼のイメージが広がっただけでなく、地場産業発展への期待までが一層強くなりました。

第6講 皮革工芸を楽しもう 〜皮革工芸によるオリジナルの小物づくりに挑戦しよう〜 (会場:県立水口東高等学校)

講義のようす

 講座の始まりは、「皮」と「革」の意味、「鞣す」という字の由来など、普段にはまず意識することのない語意の基礎学習。皮革工芸の歴史を学び動機付けができたところで実習の説明となりました。
 受講生のほぼ皮革工芸加工は初体験。多少の不安も見られましたが、時間の経過とともにそれも解消され、作品づくりへの意欲が高まっていきました。彫った絵柄への着色工程に入ると表情に全員がも余裕が感じられるようになりました。
 そして、2時間があっという間に過ぎ、延長して取り組む受講生もありました。自分だけのオリジナルキーホルダーが完成し、講師・助手の先生への感謝の気持ちや、もう一度挑戦してもっといいものを作りたいとの意欲に満ちた声が受講生の講座記録に記されました。今回は、講師先生のもとで学んだ大学生が助手として参加され、指導のありようのモデルも示していただきました。
 「お店でこのような商品を見たとき、見る目が違ってくると思う」、「民芸品として売り出しに繋げられれば」、「甲賀市を工芸のまちに」。製作だけでない本講義の値打ちを示す、記憶に残る講座となりました。
          

第7講 障がい者理解を深めるために 〜擬似体験プログラムを使って〜 (会場:県立三雲養護学校)

講義のようす

 会場までの地理と「疑似体験プログラム」というワードに馴染みがない等により、出席者の数に多少の不安がありましたが、ほぼ、いつもどおりの参加を得て第7講が開催されました。
 障がいを持つ方への接し方を、「how to 」式でなく、疑似体験プログラムで理解を深めながら学びました。<1>否定語は肯定語に置き換えて話す <2>具体物やジェスチャーを交えて話す <3>一つひとつゆっくりとわかり易く話す <4>主要なことは最初に伝える等の技術だけでなく、障がいを持つ人の立場に立って考える時の基礎知識をわかり易い的確なことばで伝授していただきました。
 「擬似体験プログラムが役立った」、「様々な障がいを全部理解することはできないけれど、少なくとも ”そうなんだ” ”そういうことか”という気持ちになれそう」、「開塾して10余年、今週からもっと楽しく子どもたちと接することができそう」、「今、指導している方に障がいがあります。もう少し彼に寄り添ったアドバイイスを心がけます」等、前向きな感想を述べられる受講生が多くおられました。講座の最後には、施設見学もさせていただきました。

第8講 和のおもてなし 〜家庭でできる季節の和菓子づくり〜 (会場:県立石部高等学校) 

講義のようす

 講義後の感想を羅列すると、「近江茶1200年の歴史と伝統がよく理解できた」、「お茶の成分や淹れ方によるうま味と効能を数字を使って科学的に講義していただいた」、「健康効果を改めて実感した」、「こんなに簡単にできる和菓子があったのか」、「講義よし お茶よし 饅頭よし」。そして、極め付けが、「何度も受けたい講義である」。
 食を伴う講義であったとはいえ、受講生にこれだけ受け入れられた講義はありません。講師先生の高い専門性・博識、そして、遠慮がちにサポートする学生さんの姿に、受講生一同大きな感銘を受けました。
講義のようす 古来から日本が大切にしてきた「おもてなしの心」、これをわずか2時間
で見事に表現していただきました。
 「手軽にできるので老人会のお菓子として、次回の当番の時に出そうと思います」と話される受講生もありました。
 甲賀校は、学びの成果が輪となって広がることを大いに期待しています。


(3)理論学習講座

 会場:立命館大学びわこ・くさつキャンパス エポック立命21「K310会議室」「K306会議室」

講座 日時 テーマ 講師
第9講 10月3日(土)
9:30〜11:30
 超高齢社会の医療介護連携と生活支援サービス 立命館大学経営学部教授
肥塚 浩 氏
第10講 10月10日(土)
9:30〜11:30
 運動機能の評価と介護予防に向けた運動療法 立命館大学スポーツ健康科学部助教
藤本 雅大 氏
第11講 10月17日(土)
9:30〜11:30
 家庭で取り組む筋トレ(健康バンド運動) 立命館大学スポーツ健康科学部教授
藤田 聡 氏
第12講 10月24日(土)
9:30〜11:30
 農と地域の未来を拓く「6次産業化」 立命館大学経済学部教授
松原 豊彦 氏
第13講 10月31日(土)
9:30〜11:30
 消費動向をみすえた6次産業化の推進 立命館大学経済学部教授
松原 豊彦 氏
第14講 11月14日(土)
9:30〜11:30
 着地型観光手法によるコミュニティ・まちづくり 立命館大学経済学部客員教授
金井 萬造 氏
第15講 11月21日(土)
9:30〜11:30
 ひとのつながりを活かした地域づくり 立命館大学経営学部教授
肥塚 浩 氏

第9講 超高齢社会の医療介護連携と生活支援サービス (会場:立命館大学)

講義のようす

 超高齢化社会に入ってきた我が国あるいは甲賀市の現実を豊富なデータをもとにした資料で分かりやすく解説していただきました。ご高齢の受講者が多く、本日のテーマを自らの問題として受け止め、教室には真剣な受講の姿がありました。
 医療・介護・生活支援サービスの現状や将来の見通しについても、問題点を的確にご指導いただき、自助・互助・共助・公助が必要なこと、また、包括ケアシステムが大切なことなど、一人ひとりが今後どのように生きていくかや新しいシステムをどのように構築していくのかをご講義いただきました。講義後の質問も多く出て、活気ある講座となりました。

第10講 運動機能の評価と介護予防に向けた運動療法 (会場:立命館大学)

講義のようす

 実技を伴う講義であり、時間があっという間に過ぎてしまいました。講師先生の事前の周到なご準備により、大変密度の濃い内容を短時間で気軽に受講できたことや体力不足という自分の関心事・課題にぴったりと合った内容であったことなどにより、受講生からは、すばらしい講義が受けられたと喜びの声が寄せられました。
 インパクトのあったワードとしては、 「転倒予防接種」「非注意性盲目」「サルコペニア」…が挙げられます。また、「全身的な筋力の指標は握力である」や「24回のスリップ経験で転倒が予防できる」などのご指導はまさに衝撃的で、印象に残る講義となりました。

第11講 家庭で取り組む筋トレ(健康バンド運動) (会場:立命館大学)

講義のようす

 健康維持のために必要なものは筋肉。今回の講義では、明快な結論をいただきました。そして、筋肉量をふやすには、たんぱく質の摂取が重要。「筋肉が重大疾患に大きく影響する」とのご指摘は、「健康維持のために野菜の摂取を」の現代にあって、新たな警鐘を鳴らされました。
 講義の後は実技。セラバンドを使った筋力トレーニングは、高齢者でも短い時間で気軽にでき、「これなら自分でも続けられそう」との思いを抱かせるに十分でした。
 「家族で一緒にやっていきたい」「同い年の友だちに知らせたい」「市でもこのような教室を開いてほしい」など、前向きな感想が多く寄せられました。
 この日は、講義後、立命館大学地下の「木瓜原遺跡」を見学させていただきました。

第12講 農と地域の未来を拓く「6次産業化」
第13講 消費動向を見据えた「6次産業化」の推進 (会場:立命館大学)

講義のようす

 まずは、「6次産業化とは」の解説。学生時代に学んだのは第3次産業まで。耳慣れない言葉でしたが、総合産業化で付加価値を拡大し新しいビジネスを創るとの説明が入ると、「6次」が容易に理解できました。
 そして、「なぜ必要なのか」を各地の事例をもとにして解説され、その後、6次産業化を進める方策のお話がありました。そのカギになるのが、人材育成。とりわけ、コーディネーター・プロデューサーの立場に立つ人が重要であることを強調されました。地域ブランド確立の学習では、「地域資源は、外部の目で見直すほうが気づくことが多い」のご指摘にハッとした受講生も多かったようです。
講義のようす 第13講は、前回に引き続き、農業の6次産業化の講義でした。今回は、「6次産業化の展開」と銘打たれ、6次産業化を進めるにはどうしたらよいかを最近の食料消費動向により言及されました。消費者の簡便志向、健康志向、節約志向に対応した細かい取り組みも大切であることがわかりました。
 ただ、今、世の中の関心事となっている「TPP」のことについて話が聴きたかったとか、ディスカッションの場がほしかったとの声も聞かれました。

第14講 着地型観光手法によるコミュニティ・まちづくり (会場:立命館大学)

講義のようす

 本講義では、「着地型観光とは何か」のご指導をいただきました。<1>着地とは観光地・目的地のこと <2>これまでは、マス観光が主体であったが、現地における体験などを織り込んだ新しいメニューが求められている <3>地元住民の主体的な企画・参加で成立するプログラムである <4>着地型観光とはまちづくり事業そのものである <5>着地型観光を進めるためには、地域の評価が大切で、地域の強み(S)、弱み(W)、事業展開の機会(O),避けるべき外部との競争関係の脅威(T)、いわゆるSWOT分析が一般的であること そして、甲賀市もこの分析が行われているとのお話に興味がわき、学びの喜びを味わうことができました。この日は、旅・観光のあゆみを切り口としてまちづくりを考える良い機会となりました。

第15講 ひとのつながりを活かした地域づくり (会場:立命館大学)

講義のようす この日は、立命館大学の肥塚教授から、ひとのつながりという視点から地域づくりを述べていただきました。人口減少・高齢化社会の中で地域をどのようにして発展させていくのかを、平成27年6月30日、国の「まち・ひと・しごと創生本部」が決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」をベースにしてご講義をいただきました。
 後半は、滋賀県の人口の動向を図表で示していただき、甲賀市の地域産業振興・地域包括ケアシステム・生活支援・介護予防サービスと高齢者の社会参加について、その充実策を話していただきました。ひとのつながりを広義に捉え、人と人だけでなく、機関と機関、官と民、国と地方等、組織間のつながりについての必要性を強調されました。
 この日は最終回であり、講義終了後、すぐに閉講式が行われ、校長からねぎらいの言葉とともに28名に「修了証書」が授与されました。
 また、受講生の要望に応えて、その後、同会場にて「交流会」を行い、全15回をパワーポイントで振り返り、和やかなひと時を過ごしました。


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