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人権教育

今後の同和行政に関する基本方針〔抄〕

平成9年6月18日
平成12年3月8日改正
滋賀

 県においては、同和問題の抜本的解決を図ることを目的として、昭和46年に「滋賀県同和対策長期計画」、昭和57年に「滋賀県同和対策総合推進計画」、昭和62年に「滋賀県同和対策新総合推進計画」を策定し、さらに平成5年には「滋賀県同和対策新総合推進計画」の改訂を行い、これらの計画に基づき、関係諸施設を総合的かつ計画的に推進してきた結果、所期の目標に沿って相当の成果を収めてきたところである。

 特に「滋賀県同和対策新総合推進計画」(改訂計画を含む)は、同和対策事業を円滑かつ迅速に推進し、一般対策への移行を円滑に進めるための特別措置による最終的な総合計画として位置付け、取り組みを進めてきたところであるが、その計画期限である平成8年度においても、別添「同和対策の現状と課題」で示したように、今後も解決すべき課題がなお残されている状況がある。

 昭和40年の同和対策審議会は、同和問題の解決は国の責務であり、同時に国民的課題であると指摘している。県としても、その精神を踏まえて、今後とも、同和問題の抜本的解決に向けて積極的に取り組んでいく必要がある。

 今後の同和行政は、関係施策の迅速な実施によって、早期にその目的を達成するため、平成8年5月17日に地域改善対策協議会が各関係大臣に提出した意見具申「同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について」および、平成8年7月26日に政府において決定した閣議決定「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について」を十分に踏まえるとともに、本県におけるこれまでの四半世紀にわたる取り組みの成果と反省のもとに検討を加え、次の方針に基づき推進することとする。

 以下、本県における今後の同和行政に関する基本方針を、「総論」および「対策別」に分け、定めるものとする。

〔総  論〕

 特別対策は、事業の緊要性等に応じて講じられるものであり、できる限り早期に一般対策へ移行することがその趣旨であるため、基本的には、特別対策は平成8年度末をもって終了し、残された課題については一般対策によりその解決を図るものとするが、一部の事業については特別対策を経過措置として講ずるものとする。

  また、残された課題解決に向けて、既存の一般対策では対応が困難な分野については、既存の一般対策に工夫(既存の一般対策の改善または新規の一般対策の創設)を加えて適切に対応するものとする。

 なお、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に規定する対象地域以外で歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上は阻害されている地域においては、その地域のニーズに応じた一般対策の活用に努めるものとする。

(1) 物的事業のうち、国において経過的措置として5年間に限り財政上の特別措置を行うこととし、所要の法的措置が講じられる事業については、関係市町と十分な連携を図り、その早期完遂に向け、積極的な助言指導に努めるものとする。

(2) 物的事業のうち、国において一般対策に移行するが、5年間に限って補助制度において特段の配慮を行う等、所要の行政的措置が講じられる事業については、関係市町の需要に適切に対応し円滑に実施できるよう助言指導に努めるものとする。

(3) 非物的事業のうち、国において5年間の経過的措置を講じて終了することとし、所要の法的措置が講じられる個人給付的事業および5年以内での計画的削減を完了することとし、経過的に所要の法的措置が講じられる相談員等の設置事業については、関係省庁と十分な連携を図り、その円滑な実施に努めるものとする。

(4) 同和問題に関する差別意識の解消に向けた教育・啓発事業については、より効果的に展開するため、国の方向性も踏まえ、「人権教育のための国連10年」との関連に留意しつつ、人権教育・人権啓発の事業に再構成し、その中で同和問題を人権問題の重要な柱として捉え、積極的に推進するものとする。

 なお、「人権擁護施策推進法」に基づく「人権尊重の理念に関する国民相互に理解を深めるための教育および啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項」ならびに「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本事項」の審議状況については、その動向に十分留意するものとする。

(5) 県の単独事業においても、国の方向性やその趣旨を踏まえ、特別対策として経過措置を講じる場合は、5年以内に特別対策を終了し、一般対策へ移行するものとする。

〔対 策 別〕(一部略)

4.教育対策

 教育の分野においては、これまでの同和教育が積み上げてきた成果と手法への評価を踏まえ、同和教育の深まりを通して人権教育への広がりを展望しつつ、人間の尊厳を基本に、就学前教育、学校教育、社会教育の各分野が相互に連携し、人権尊重の精神を日常生活に具現する態度の育成を目指していくための人権教育として、発展的に再構成するものとする。

 その際、同和問題を人権問題の重要な柱として捉え、この問題の固有の経緯等を十分認識しつつ、「人権教育のための国連10年」の関連に留意しながら、積極的に推進するものとする。

 なお、特に次の事業については、経過的措置を含め、体系的な整理とあわせた必要な工夫を加えて、適切に対応するものとする。

(1) 高等学校等進学奨励費補助事業については、5年間の経過的措置を講じて終了するとした閣議決定に基づき、その有効な活用を図るとともに、これを補完する県単独事業である専修学校等修学資金貸付事業についても同様とする。

(2) 同和地区児童生徒学力向上総合推進事業については、国が新設する「教育総合推進地域事業」を補完する観点から、新たに”教育上特別な配慮を必要とする地域”を定めて対象を拡大し、この事業等を通じて、同和地区児童生徒の自立促進の観点に立った一層の進学意欲と学力の向上をめざし、学校、家庭および地域社会が一体となった総合的な取り組みを促進するものとする。

(3) 学校同和教育の推進に係る事業については、同和教育研究指定校事業など学校教育の全領域に位置付けたこれまでの同和教育を一層深めつつ、さらに人権教育への広がりの観点から再構築し、推進を図るものとする。

(4) 同和地区教育文化振興事業については、これが補完してきた国の地域改善対策としての社会教育関係委嘱事業が、「人権教育推進市町村事業」に組み替えられたことから、その積極的な活用を基本にしつつ手法や内容等に工夫を加え、同和関係者の自立促進の観点に立った教育・文化の振興をめざす取り組みが地域の実情に応じて実施されるよう、引き続き支援していくこととする。

(5) 社会同和教育関係事業については、同和問題を人権問題の重要な柱と捉え、それぞれの実施主体の責務と役割を明確にしながら、「人権教育総合推進事業」として再構築し推進を図り、地域社会での差別のない住みよいまちづくりの実現をめざした主体的な取り組みを促進していくものとする。