平成12年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書

新しい時代に対応する青少年教育のあり方について

〜社会全体で子どもを育てる環境づくりのために〜

青少年を取り巻く現状と青少年の姿
1 青少年を取り巻く社会の変化について
 戦後、日本社会は、経済優先の高度経済成長の中を突き進んできました。しかし、いまや急激な社会構造の変化の中で、バブル経済の崩壊とともに新しい時代像が模索されようとしています。

 このような中、近年の少子化、核家族化、生活様式の変化や地域社会の機能の衰退が家庭や地域の教育力の低下をもたらし、青少年の社会性が育ちにくい状況が生まれています。また、家庭や地域の変化、人間関係の稀薄化により、今の青少年は心の安らぐ居場所がないのが現状であります。

 さらに、学校教育での部活動や学習塾通い等により青少年の多忙さが目立ち、大人(親)と子どもの生活が遊離しているのも事実で、家族と過ごす団らんの時間も十分ではありません。

 学校教育においては、「なぜ学ぶのか」、「何が学びたいのか」等、「主体的に学ぶ姿勢・行動力」が不足していることが指摘され、進学率は伸びているものの、中退・不登校など様々な課題が山積しています。

 いずれも、経済成長期に陰に隠れていたいろいろな問題が、バブル崩壊とともに顕在化してきたものです。このように青少年の置かれている状況は、様々な問題が複雑に絡み合いながら、大人や社会の動向とともに変化しているのです。

2 今日の青少年の姿について
 今日の青少年の姿を語るときに、とかく大人は青少年の目線より上で語り、問題点ばかりを指摘しますが、事実はそうばかりではありません。記憶に新しい阪神淡路大震災や福井県沖での重油流失タンカー事故において、若者のボランティア活動には目を見張るものがありました。大人社会の姿が今日の青少年に対し良きにしろ悪しきにしろ影響を与えてきたにもかかわらず、青少年自身にのみ問題があるかのように語られています。

 また、今日の高度情報化時代とその日進月歩の目まぐるしい技術の変化は、情報化時代に生きる青少年の生き方に大きな影響を与えてきました。そして、彼らは最新の情報機器を抵抗もなく自在に使いこなし、新しい発想で活用し、積極的に情報機器を取り入れた生活をしています。

 さらに、今日の青少年は初対面の人に対しても直ぐにうち解ける社交性とともに、新しいことにも戸惑うことなく行動に移す積極性と、進取の気性を持っています。

 しかし、情報の取捨選択能力においては社会経験の未熟な青少年には判断力が伴わず、諸問題が存在するのも事実です。また、情報化社会の中で個性と流行のはき違いや、様々な体験の不足からコミュニケーション能力、集団適応力、社会性が不十分な青少年も多く見られます。

 文部省は、新しい学習指導要領の中で 「生きる力 」の育成をうたっています。この「生きる力」については、

1)自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力、

2)自らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性とたくましく生きるための健康と体力

、と説明しています。

 言いかえれば、今日の青少年は部分的な能力では優れていますが、総合的に「生きる力」が不足しているということであります。これはひとつには情報化社会の中での疑似体験の多さからきていると思われます。

 さらに、特記すべきことは、そのような中で、問題を起こす可能性をどの子も潜めており、いきなり重大な非行に走るケースが増えてきているということであります。俗に言う「キレル」現象とは、このようなことを表現している言葉といえます。ストレスの多い社会環境の中で、大人以上に青少年もストレスの多い生活を送っています。

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