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体験を通じた環境教育の実践

滋賀県立米原高等学校  校長 一色 悦二

野外での体験を重視し、理科教育の教材(石灰岩、古琵琶湖層等)を環境科学的に取り扱い、再構成した事例を中心に、いくつかの環境教育の指導事例を紹介する。


 本校では従来、各教科の中にあるいくつかの教材に対し、可能なものについて環境教育的視点を取り入れ、教料指導を中心とした環境教育を行ってきた。
 今年度はさらに、野外での実習を中心として体験に基づいた環境教育を行うことを取組みのテーマとした。そこでまず、従来から行われている野外実習をもとに、事前・事後の指導を加えて、実習内容と環境問題とのかかわりを学ぶ一連の指導過程を考え、実践した。また、こうした野外での学習の充実を自指し、本年度は新しく他の地域での野外実習の実践を行い、環境教育への活用を試みている。概要は以下の通りである。


野外実習の実際

●大垣市の金生山における石灰岩体での野外実習
対象:本校理数料1年生
実施日:平成8年6月8日(土)

実習内容
 大垣市にある石灰岩鉱山の金生山において、岩石の産状、岩体の規模、採掘の様子などを観察しながら、石灰岩の採集をする。石灰岩に含まれている化石(フズリナ、サンゴ等)の観察を行う。

実習のねらい
 この実習は従来より、理数地学の野外実習として、石灰岩を地質学的にとらえる視点の育成を主眼に実施していた。石灰岩についてはさらに、資源としての石灰岩という視点と、大気中の二酸化炭素を生物が固定したものという、気象学的な視点もある。実習においては、実際に現地において、地層の分布、化石の産出状態や、採掘により地形的に変化している鉱山の様子を観察する。この活動を通じて、人間が石灰岩を資源として利用することはまさに自然からの恩恵を受けていることであるという事実と、鉱山の採掘の様子から、資源が有限であることを実感させる。またその資源である石灰岩は地球上で、長い間における生物の活動によって作られたものであり、短時間で再生産されるものではないというように、資源に対しての歴史的なとらえ方ができるようにする。

実習地遠景
実習地遠景
金生山での実習の様子
金生山での実習の様子

事後指導
 石灰岩中の化石の観察から、この岩石は地質学的に長い年代を経てきたものであることを理解させる。さらに石灰岩を酸に溶かして二酸化炭素を発生させた後、石灰岩は、かつての大気中の二酸化炭素が海洋中に溶けたものを生物が固定したものであることに気付かせ、このことから、石灰岩体をつくっている珊瑚礁の生物が過去から長い期間にわたって大気中の二酸化炭素濃度の調節について大切な役割をもっていたことに気付かせる。さらに、二酸化炭素による温室効果、地球の混噴化へと内容を発展させ、石灰岩の採掘と地球の大気環境とを関連させてとらえる環境科学的な視点を強調した。それを基に、生徒自身の生活で二酸化炭素の放出にかかわる行動を挙げさせ、地球の環境を守るために自身のライフスタイルをどのように変化させていったらよいか、各自の生活のチェックテストを行い、自分自身のできる行動について考えさせ、自身の生活スタイルの変化の必要性について意識を持たせる。


●甲西町野洲川河原での古琵琶湖層群の野外実習
対象:本校理数科1年生
実施日:平成8年9月28日(土)

実習内容
 甲西町野洲川河原において、古琵琶湖層群蒲生累層の河川堆積層、立木化石、史跡化石の観察と、植物化石(メタセコイア)の採集を行う。

実習のねらい
 琵琶湖学習の教材として、古琵琶湖層群の観察を行う。琵琶湖は長い歴史を経てきている湖であることを、地層の観察や、象の足跡の化石といった、現在の滋賀県には見られない生物の化石を観察を通じて実感させる。琵琶湖についてこうした歴史的なとらえ方をさせることで、琵琶湖の持つ価値に気付かせる。このことにより、後の琵琶湖学習において、琵琶湖の環境が、人間によって変化していった時間スケールの短さとの対比をさせることができる。

立木化石の観察
立木化石の観察

事後指導
 3学期に、理数地学の地球環境史の内容の学習において、単元の発展的内容として、琵琶湖の生い立ちを学習する。琵琶湖について地質学的な学習の後、今日の琵琶湖の抱える水質汚還の問題を取り上げ、琵琶湖の水質を守るために生徒自身の家庭での生活スタイルにおいて考慮すべきことを学習する。併せて、琵琶湖博物館を活用した琵琶湖学習の実施を計画している。


その他の実践事例

●環境科学特別講義の実施

対象:本校理数科1年生
実施日:平成8年11月21日(木)

講師:滋賀県立大学環境料学部  大畑哲夫助教授
演題:地球環境と雪氷

内容:
 環境教育の一環として、滋賀県立大学より、環境科学を専門とする教官による講義を、生徒対象に実施した。なおこの県立大学教官の派遣は、滋賀県県教育委員会の事業として行われているものである。講義は、雪氷に保存・記録された過去の地球大気を分析した結果を基に、今日地球の温暖化が進行していること、また雪氷が地球大気に及ぼす影響などについて、データをもとに解説がなされた。また、そうした気象学的なデータを南極やチベットで測定する様子などについて、スライドを用いて解説がなされた。
 講義内容は、理数地学の地球環境史の内容の学習に活用する。講義は他のクラスにおいても活用できるようにVTRに収録してある。

●学校での気象観測データの活用
 本校では、すでに20年以上、百葉箱での、毎日の気象観測がなされている。従って、本校での気温の移り変わりがわかり、環境教育の授業の一つのテーマとなっている地球の温暖化に対して、はたして本校ではそのような事実が見られるのか、測定データを授業で活用している。データは一部損失もあるが、結果としては冬季に気温の上昇傾向が見られている。


今後の課題

 本校では体験的な活動を通じた環境教育を今年から取組みはじめた。野外での学習となる場合、大勢の人数では実施が囲難となるため、とりあえず今年度は理数科の生徒に対象を限らざるを得なかった。今後は他の生徒に対してどのように体験的学習活動を取り入れるかが課題である。


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