平成24年度「淡海生涯カレッジ大津校」の講座実施レポートをお届けします。
期間:平成24年6月16日(土) 〜平成25年1月26日(土) 土曜コース
講座 | 日時 | テーマ | 講師 |
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第1講 | 6月16日(土) 10:00〜11:30 |
『近江の暮らしを描く』 〜近江の原風景〜 |
画家 福山 聖子 |
第2講 | 6月23日(土) 10:00〜12:30 |
『湖国の食文化を訪ねて』 〜酒蔵見学、和菓子作り体験、琵琶湖の 絶景を見ながらのお茶席体験〜 |
浪の音酒造社長 中井 孝 金時堂店主 山本 伸一 居初家天然図画亭亭主 居初 寅夫 |
第3講 | 7月7日(土) 10:00〜12:30 |
『歴史的伝承を訪ねて』 〜堅田の歴史探訪〜 |
湖族の郷資料館長 岡本 邦三 松井造船所 松井 三男 祥瑞寺住職 松川 畊山 |
第4講 | 7月14日(土) 10:00〜15:00 |
『里山を訪ねて』〜仰木の風土と祭り〜 『ワークショップ』〜これまでの学習を振り返り〜 |
成安造形大学附属近江学研究所 研究員 加藤 賢治 |
第5講 | 7月28日(土) 9:30〜15:45 |
『美しい水を守る針江のかばたのある 暮らし体験、高島まちおこし体験』 |
針江生水の郷委員会 高島びれっじ職員 |
[開講式]
1 あいさつ
2 実施機関の紹介
3 受講生代表のことば
4 オリエンテーション
5 受講の諸注意
福山聖子氏の作品である近江の風景画をもとに講演された。講演を通して講師の近江や大津の自然や文化、暮らしへの思いや郷愁が伝わってきた。移りゆく自然との接し方、残された原風景やくらしとどう向き合い、取り入れ残していくべきかを示唆し提起していただいた。
浪の音酒造の酒蔵見学をするなかで、
酒造りについて社長より説明を受ける。
また、金時堂店主より堅田の銘菓や歴史
を聞き、その後和菓子づくりに挑戦した。
さらに国指定の民家、居初家天然図画亭亭主より庭園、茶室等を紹介され、茶室にててお茶席を体験した。
〔感想〕
堅田の酒蔵は全てを家族で賄っており文化の自給が成り立っている。和菓子はシンプルさの中に微妙な美的感覚を籠めるむずかしさを感じた。お茶席は、琵琶湖と三上山を借景にするための工夫が随所に見られ、日本の繊細さを感じた。
湖上交通の中心となっていた丸子船製作所で有名な松井造船所、さらには湖族の郷資料館にて、岡本館長さんより堅田の歴史を詳細に説明を受けた。また、伊豆神社、一休さんで有名な一休宗純が修養をつんだ祥瑞寺で、見学説明を、そして、近江八景の一つ「堅田落雁」として有名な浮御堂に行った。浮御堂回廊からの琵琶湖の眺めは、絶景であった。
〔感想〕
堅田は琵琶湖西岸の交通の要所・漁労基地としての価値から平安の権力寺・社の直轄地とされ、漁労権・通行税収などを得、経済も潤い、漁船・漁労技術を発展させた技術者や、茶の湯や俳句たしなむ文化人も住む、幅の広い中世の小都市をなしていたものと思う。
成安造形大学の加藤賢治先生の案内、指導により結いの里、仰木の里山を訪ねた。仰木平尾地区の棚田(馬蹄形の棚田)にて、説明を受け、さらに、小椋神社で仰木の宮座と祭礼(泥田まつり)について説明を受けた。
仰木太鼓会館では、仰木太鼓のいわれを学び、児童による太鼓の実演を見せていただいた。
成安造形大学では、加藤賢治先生より仰木祭と村座の祭礼(スノウ)について講義を受けるとともに、今までの講座を振り返りグループ討議と発表を行った。
〔感想〕
棚田もまた比叡山と共にあり、それを保全する努力は、並大抵ではないことを感じた。また、仰木太鼓の保全努力も、子どもたちの真剣な取組を見て強く感じる。祭りそのものが、歴史でもあると思える。
生水の郷(しょうずのさと)と呼ばれる湧き水の豊富な針江地区の日吉神社をスタートし、ボランティアガイドさんについて、1時間半、各家庭のかばたを見学。比良の山麓から湧き水が、元池、壺池を経て、それぞれのかばたへ。
高島びれっじにて、墨流し染めを体験。水槽に海面活性剤の入った絵の具を3〜4色落とし、割り箸を使って水の流れをつくることにより生まれる絵柄。水気をとりアイロンで仕上げる。今回は大判のハンカチを制作。
〔感想〕
子どもたちが、巨大発泡スチロールに乗って、針江大川を流れています。かばたには、どこでもナスやキュウリが浮かべてあり、強い日差しと対照的に涼しげでした。コイを飼うのも水を清く保つため。油や洗剤は流さない。水を汚さないのが文化になっていました。
講座 | 日時 | テーマ | 講師 |
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第1講 | 8月4日(土) 10:00〜12:30 |
芸術表現実習講座 ・我々を取り巻くまわりの事物・事象を音や形で表現することを通し、自然や環境との新たな出会いをする。 |
堅田高等学校 芸術科教員 |
第2講 | 8月25日(土) 10:00〜12:30 |
堅田探訪講座 ・問題発見講座を受け、歴史の宝庫ともいえる堅田の持つ歴史、文化を五感で感じる。 |
堅田高等学校 地歴科教員 正調淡海節保存会員 |
第3講 | 9月1日(土) 10:00〜15:30 |
理科実験講座 ・化石採集、断層見学を通して、滋賀の古代の歴史への夢をはせ、理科の面白さを実感する。 |
堅田高等学校 理科教員 |
第4講 | 9月15日(土) 10:00〜12:30 |
郷土料理体験講座 ・琵琶湖の恵みである湖の幸や山の幸を調理し、食することを通して、滋賀の豊かな自然の恵みを実感する。 |
堅田高等学校 家庭科教員 郷土料理研究会講師 |
第5講 | 9月22日(土) 10:00〜12:30 |
言葉の芸術に触れる講座 ・落語、詩語りに触れ、言葉の芸術の魅力を体感する。その後、5回の実験実習講座の振り返りを行う。 |
堅田高等学校教員 詩人 里 みちこさん |
『「自然をテーマにした音楽」を聴きながら野の草を団扇に描く』(よく観察をしてその情景に思いを馳せ、構成して表現をする。)という内容で、節電の夏を意識しながら、受講者各人がそれぞれ感性により「団扇」の製作を行いました。芸術科の教員が自然や環境との新たな出会いを念頭に、自然をテーマにした音楽を聴きながら、班に分かれて、美術科教員の指導のもと、2種類の野草を団扇に描いたあと、水彩絵の具で色つけを行いました。最後に、書道教員から好きな言葉を団扇に書くことや朱色の落款を仕上げに描くことの指導がありました。
〔感想〕
絵を描くことは小学校以来です。
音楽・美術・書道のコラボレーションの講座はアイディアを凝らした、いい試みだと思いました。
地元、堅田の正調淡海節保存会の皆さんによる、「淡海節」を聞きました。近江の堅田で生まれた俳優志賀廼家淡海が作詞作曲した「淡海節」は、大正5年に発表されて今日に至るまで愛唱されました。その「淡海節」を素晴らしい声で、情感こめて歌われ、すっかり聞き入り感動しました。
その後は、「湖族の郷」堅田の街探訪に出かけ、蓮如上人ゆかりの夕陽山「本福寺」と「堅田源兵衛の首」で有名な朝陽山「光徳寺」で研修を行いました。
〔感想〕
『堅田源兵衛、首の寺』ってどういうこと?
高校時代に見た看板を完全に忘れ去っていま
した。今日、広徳寺を参拝し、故事を知るこ
とで「昔の疑問」が解消されました。 この講座は、その隙間を埋めてくれると確信します。
堅田漁港の貝殻集積場にて、琵琶湖の現生の貝を採集しました。ほとんどが、琵琶湖の固有種(ヒメタニシ以外)で、標本の貝を参考に採集しました。さらに、上仰木地区に移動し、古琵琶湖層群堅田累層上仰木灰層を見る中で、地層の状況から大型動物の足跡なるものも見つかりました。葛川地区では、河原から見る断層地形や過去の地震による山の崩落によるダムの出現等、現場にて講話を受けました。
〔感想〕
今回は天候もよく、堅田漁港での貝殻標本の作成をはじめ上仰木での50万年前の火山灰層の象の足跡そして化石のお土産。午後からは、葛川での花折断層の破砕帯見学、オンノノ平の大地震(1662年)の状況等、詳しい資料と共に服部先生のわかりやすい説明に有意義で楽しい一日を過ごしました。
郷土料理研究会の高橋さん、小島さん、木原さん、そして堅田高校の家庭科教員2名の先生方を講師に郷土料理を体験しました。ビワマスを使った「あめのいお御飯」、「丁字麩の芥子和え」、「焼き鯖そうめん」、「冬瓜の薄くず汁」の4品料理しました。その後は、講師の先生方とともに試食しました。
最後に、滋賀短期大学の小島朝子名誉教授より「滋賀の伝統食」と題した講義を受けました。
〔感想〕
郷土料理が育ってきた背景を知り、そしてその料理を後世に伝えたいという熱い思いにふれることができ、感激しました。楽しく調理指導していただき、とても美味しくいただきました。家族にもつくってあげたいです。
詩人であり「詩語り」という新しい言語芸術分野を切り開いておられる里みちこさんをお招きし、東日本大震災をテーマにした「天からの石文―3・11からのメッセージ」と題して詩語りに触れました。
里みちこさんの詩は、言葉が生きて心に響き、語りかけてくれる。あっという間に1時間余りが過ぎ里さんの世界に引き込まれた。
後半は、堅田高校の教員による古典芸能「落語」を体験しました。素人とは思えないほど、言葉巧みに、実にテンポよく、大いに楽しむことができました。
〔感想〕
まさに言葉の芸術にふれられた感じです。文字や言葉は憶えるだけでなく感じ取るものであることが解りました。耳からの伝わるものは、本当に心に響きますね。