「 現代社会と環境 」 ( 県立甲南高等学校 1年生 )
昨年度、1年生を対象に村田製作所の開発者の方からお話していただきました。大変好評だったことから、今年度も連携授業のご依頼があり、村田製作所に相談したところ、こころよく お返事をいただき、連携授業を実現することができました。
最初に、村田製作所の主力品製品である、チップ積層セラミックコンデンサが、どんなところに使われているのかを考えました。
その用途例として、携帯電話に230個、ノートパソコンに730個、薄型テレビには約1000個のコンデンサが使用されていることを教えていただきました。
このコンデンサは、シャーペンの芯の先(0.5mm)より小さい電子部品で、その構造は厚さ1ミクロン(1/1000mm)程度の薄いセラミックシートを数百層も重ねて、超小型化(0.4mm×1mm)に成功したことも説明していただきました。
このコンデンサのものづくり技術が、世界各国の電気製品の電子回路基板に多数採用されており、精密部品を提供する裏方として、活躍されている会社です。
さて、電子部品メーカである村田製作所が、なぜ自転車ロボットのムラタセイサク君を開発することになったのか?
このロボット開発を最初から手がけられた技術者の方から、大変ご苦労されたお話など聞くことができました。
きっかけは、社内制度を活用した〔夢のある仕事に技術者がチャレンジするフロンティアテーマ〕に応募したところ、研究開発費の予算が通り、開発プロジェクトチームが発足したことでした。
いよいよ夢のある仕事にチャレンジする『ムラタセイサク君』の設計・開発がスタートしました。世界のどこでもやっていない自転車に乗ったロボットを開発する上で、一番苦労したのは、停止状態のまま長時間自転車が倒れないようにすることでした。自転車ロボットも停止状態や超低速走行で倒れないようにする《不倒停止制御の実験》は、かなり難しい技術だそうです。
毎日走行実験を繰り返し、何回も何回も失敗を積み重ねて、ようやく 倒立振り子の原理を自転車ロボットに応用した開発に成功するまでの苦労されたお話をお聞きしました。
ムラタセイサク君(小学校3年生の男の子のロボット、京都府出身)を産業用ロボットショーに初出展して幅2cmの平均台の上を見事に走行するまでの映像は、大変感動的で、私たちも開発者の方々と同じように「やったあー!」という気持ちになりました。
ムラタセイサク君の開発の根底には、村田製作所が高度な電子部品を製作できる、コンデンサ製造工程のものづくりの技術力が、たくさん活かされていることも知りました。
また、ムラタセイサク君の出前授業の目的について、3つのポイントで、わかりやすく説明していただきました。
後半の授業は、短時間でしたが、待ちに待ったロボットの実演をしていただきました。
最初は、新しく仲間入りしたムラタセイコちゃん(幼稚園年長組の女の子ロボット、滋賀県出身)が登場し、一輪車に乗って、パソコンからのリモコン操作で、床の上を走行する様子を講師の方から実演してもらいました。
とっても愛らしいセイコちゃんに、生徒も先生も「すごーい」や「可愛い!」などの大歓声があがりました。
次に、いよいよムラタセイサク君の登場です。(セイサク君とセイコちゃんは、従兄妹(いとこ)という設定でロボットを開発したとの補足説明がありました。)
自転車に乗ったムラタセイサク君をマジックスティックというロボットを操るセンサー棒を使って、床のシートの上を走行したり、バックしたり、不倒停止する様子を実演しました。
ムラタセイサク君が低速走行したり、不倒停止することに見事に成功すると、生徒や先生から大きな拍手と歓声があがりました。
自転車ロボットの開発には多くの失敗や大変なご苦労があったそうですが、失敗を繰り返す中で、その原因を探り、対策を練って、改良と改善を行って、すばらしい産業用ロボットが完成しました。
村田製作所の高度なロボット技術は、世界各国に認知され、ムラタセイサク君とセイコちゃんは海外出張による出前授業でも活躍されています。
昨年末には首相官邸に於いて、鳩山首相に今回の出前授業に登場したセイサク君とセイコちゃんロボットを紹介されたとのお話も伺いました。
今回の授業では、最後まで成功を信じて、決してあきらめない勇気と、チームワークの大切について学びました。
説明の時間が少し長かったように思いましたが、最先端の技術を目の前で見せていただき、大変迫力がありました。
甲南高校は今回が2回目の訪問となります。担当の先生も教室も昨年と同じだったので、大変スムーズな準備・授業進行ができました。
“産業社会と人間”という科目での授業でしたが、技術開発・ロボットと社会・ものづくりといった切り口で講演しました。今後の進路選択の一助になれば幸いです。
滋賀県は世界に通用する優秀な製造企業がたくさんあります。今後も世界の中で日本が生き残るために、若い力と発想で日本のものづくりを支えて下さい。