図書館は資料(情報)を県民に提供し、知識を万人に開放して、求める人が自由に知識に接し自分のものとするのを助ける。図書館の資料に接することによって、県民はみずからの可能性を発見し、学ぶ意欲を触発され、新しい学問に接して、自己教育への道をあゆみはじめる。さらに図書館は、県民の求めるあらゆる資料を提供することによって、県民の知的自由を公的に保障する。これらの働きは、社会を発展させる基本的条件の一つであるばかりではなく、民主主義社会を成立させる基礎条件である。
さらに、図書は学問、芸術、衣食住からスポーツまで、あらゆる分野にわたり、県民がそれぞれの必要に応じて図書に接し読書することは、県民みずからが文化をきずく大切な営みである。図書館は、誰もがこの営みを自発的に日常的におこない、文化全体の水準を底辺から高める重要な施設である。特に現代の日本においては、このような役割が特に強調され、図書館の必要が一層高まる社会的状況が以下のように存在しその解決が焦眉の急となっている。
A:考える力を養うために
子供たちが思考力、想像力、忍耐力を養い、考える力をもった大人に育つことは、一人ひとりの子供の幸せであるばかりではなく、社会全体にとってもあらゆる施策の根本となるべき重大なことがらである。読書がこれらの力を養ううえで非常に大きな働きをもっていることは特に説明を要しない。すべての子供に読書のよろこびをしらせ、読書環境を整えることは、大人の義務である。
B:学歴社会を是正するために
青少年に希望をもたせ、努力が報われる社会にするために、現在の学歴社会を正し、真の人格能力が評価され、学ぶ意欲のある人びとがいつでも学べる施設をさらに充実すべきである。これは若い頃の挫折から自暴自棄におちいる人をすくい、常に向上するために努力する人びとを増やすことにつながる。これによって得られる社会全体の利益は、はかりしれないものになるであろう。
C:余暇を充実したものとするために
労働時間の短縮は日本経済発展の条件となっている。ところが、これによって生まれた余暇をどのように過ごすかが、労働時間短縮を効果のあるものにするかどうかのわかれめとなる。短縮された労働時間が、勤労によって得る賃金と同じ価値をもつ余暇として使われなければ、残業やアルバイトの増加となり、労働時間の短縮は無意味なものとなるであろう。
勤労と同じ価値をもつ余暇のすごしかたの第一は、いうまでもなく広い意味 の学習である。それは人びとの教養と知識を高め、人間の生活を意義あるもの とするばかりではなく、次の生産にも創造的な寄与となってあらわれるであろう。
また、高齢化社会となる今後は、余暇をもった高齢者が当然多くなり、この人びとが頭脳を使い、意義ある老後をすごすためにも、図書館は大きな働きをになうはずである。
D:必要な情報をうるために
町づくりにおいても、個人生活や職場においても、さまざまな情報に接し、必要な情報を入手することができるかどうかが、ことの正否を決定する重要な要素であることは論をまたない。
また国際化の流れのなかで、何よりも必要な施策は、世界各国の正しい情報を住民に提供し、その広い視野と国際感覚を自然に身につけるよう努めることである。
滋賀県民の情報ソースは、市部においても十分とはいえず、町村では書店のないところすらある。県内の情報過疎をなくし、活力ある、若者の定住する町をつくるため、誰でもが必要な情報をうることができるようにすることは、現代の社会的要請である。
このような社会=生涯学習社会は一人ひとりの人びとが、自由意思によって、学ぶべきものを選び、自発的に学習する社会である。誰もが学びたいときに 学ぶために、図書館は最も適切な施設であり、ほとんど義務教育施設と同じような重要性をもっている。生涯学習社会における中核的施設として、図書館は今後ますます住民の要望が高まり、地域社会にはなくてはならない施設となる であろう。
滋賀県において、すべての市町村に、できるだけ早く、気軽に利用できて学習意欲に十分こたえられる図書館が設置され、幼児から高齢者まですべての人が真の自己教育にはげむことは、時代の要請であるとともに、将来の滋賀県を築くために必要な基礎的条件である。