滋賀県社会教育委員会議報告書

成人教育の充実活性化方策について

〜21世紀社会に生きる大人の社会参加促進のための学びとは〜


(平成15年12月)
子育てを通した大人の学び
1 若い親への支援
 かつては、まちのあちこちで「井戸端会議」が行われ、その中で若い親たちは先輩から子育てのヒントをもらい、地域とのかかわりの中で、知らず知らずのうちに子育てを学び子どもを育ててきた。また、家庭や地域社会には、あたりまえのようにお年寄りがいて、子育てに関する様々なノウハウを若い親たちに自然と伝授してきた。

 しかし、今日では、書物やテレビ、インターネットなどにより様々な情報を手軽に得られる反面、人と人との関係が希薄になり、子育てに関して相談する相手が少なく、一人で悩んでいる親も多い状況にある。

 このような若い親たちには、地域で子どもの育成活動などをしている人々を仲立ちにして、交流の機会や場を提供するなど、子育ての不安やストレスを分かち合い解消する仲間づくりを支援する必要がある。

 こうした仲間づくりに加えて、子育てに悩み、家に閉じこもりがちになっている若い親に対する、子育てサポーターや家庭教育アドバイザー等による相談体制の充実が大切である。

 また、ボランティア活動などの社会参加活動への参加を容易にする住民相互の託児システムの構築等、地域における子育てのネットワーク化を促進することが重要である。なお、託児システムを考えるにあたっては、中・高校生の参加についても今後検討していく必要がある。

 さらに、このような状況におかれている若い親たちの存在を周囲の人々に理解してもらう広報活動も、孤立化を防ぐ上で重要である。

2 大人と子どもの学びの融合
 祭りに代表される古くから受け継がれてきたその地域ならではの伝統的文化というものがある 。そうした文化の継承を通して 、大人と子どもの協働作業を生み出すことができる。

 大人たちは、受け継いだものを真摯に次の世代に伝えようと姿勢を正して、地域の宝である子どもたちと向かい合う。一方、子どもたちはそのような大人を好意的に受け止めながら、営々と伝えられてきた地域行事等に前向きに取り組もうとする。大人と子どもが世代を越えて、ともに共通課題に取り組むことになる。

 このように、祭りなどを単にイベントとして消化するのではなく、地域で子どもを育てていくという視点で見直し、地域ぐるみで取り組んでいくと、子ども集団だけでなく、大人集団も育っていくことになる。

 新興住宅地などにあっては、新たな地域文化の創造が行われているが、その過程の中に子どもを巻き込んでいくことが大切である。

 現在、地域教育協議会を中心にして、自然体験や文化芸術体験、スポーツなど子どもたちの体験活動が展開されているが、それらは、子どもたちだけの活動が中心である。今後は、体験活動の場の量的拡大を図るだけでなく、大人とともに地域清掃をしたり、ボランティア活動等に取り組むなど、身近な地域の中で大人と子どもがともに活動する機会を増やすべきである。

 こうした活動を通して、子どもたちは、地域の大人をモデルにしながら社会の構成員としての自覚や社会性を身に付けるとともに、自らが社会に積極的にかかわり社会を良くしていこうとする意欲・態度など、いわゆる「社会力」を培っていく。

3 子どもの居場所づくりとあわせた地域活性化への取組
 子どもを取り巻く環境が大きく変化し、地域の中で子どもたちが安心して活動できる場がなくなってきている。

 そこで、地域の大人たちが指導ボランティアとして協力するなどして学校の校庭や教室、公民館等を活用した子どもの放課後・週末の居場所(活動拠点)づくりを進めることが求められている。この居場所には、子どもだけでなくお年寄りをはじめ地域の大人も集まり、子どもを中心として、すべての住民が交流できる場としての機能も期待されている。

 本県では、いわゆる草の根ハウスと呼ばれる自治会館が多くの地域で設置されているが、必ずしも有効な活用がなされていない。住民による管理の工夫により、地域の子どもと大人の居場所として、また、地域づくりの拠点として活用することが大切である。

 また、商店街では、まちづくりコーディネーターやNPO、地域住民団体等が連携し、空き店舗を活用した子どもたちの居場所づくりとともに、商店街のにぎわいを取り戻す試みを行っている例がある。

 なお、子どもの居場所とそこでの活動プログラムをつくるにあたっては、大人が子どもの意見に耳を傾け、子どもと一緒になって進めることが大切であり、こうした協働作業により、子どもたちによる自主的運営が可能になる。

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