滋賀県社会教育委員会議報告書

成人教育の充実活性化方策について

〜21世紀社会に生きる大人の社会参加促進のための学びとは〜


(平成15年12月)
学びと社会参加を促進するための環境づくり
1 情報の伝え方の工夫
 社会教育においては、行政側が現代的課題や地域課題に対する学習機会を提供しても、人々が自発的に参加する意思を持たない限り学習活動は成立しない。その動機付けとして最も重要なことは、地域社会や学習に関する情報を効果的に届けることである。

 そこで、行政としては、講座などの実施時だけでなく、日常的に現代的課題等に関する情報を様々な方法で提供し、これらに対する関心を高めておくことが重要である。また、案内チラシをとってみても、民間の発想や手法を取り入れるなどして、参加意欲をかきたてる魅力あるものにする工夫が大切である。

 さらに、交替勤務や遠距離通勤等によりこれまで学習活動等への参加が少ない働き盛りの人たちや情報に接しにくい人たちのために、こうしたライフスタイルに合わせた情報提供の開発も必要である。

2 学習拠点の充実
・地域に親しまれる公民館づくり
 住民の生涯学習を支える地域の学習拠点施設である公民館は、講座等各種事業の実施、サークル・団体等の主体的な学習活動場所の提供、人材の発掘、情報の発信など多くの機能を併せ持っているが、それらの機能が十分に発揮されるための基盤として、多様な世代が集まる交流センターとしての機能の充実を図ることが大切である。

 公民館等親子プレイステーション事業などの実施により、一部の公民館では、若い親と幼児の利用が増えてきているものの、一般的には特定の利用団体や講座の受講生以外の住民には、必ずしも身近な「いこい」と「交わり」が持てる施設となっていないのが現状である。

 公民館を、日常的に子どもや青年、高齢者、障害がある人など様々な住民が活用できる地域の交流拠点とするため、住民のニーズに呼応した講座等の開設や施設のユニバーサルデザイン化などとともに、開館時間帯を含めて時代の要請にあった地域に開かれた新たな公民館運営の在り方を、地域住民、NPOやボランティア団体などと協議しながら検討していくことも大切である。

A.社会教育施設等の「学習センター化」
 県内には、50市町村中40市町村で、公立図書館が整備され、地域における文化拠点として広く親しまれ利用されている。他にも、近代美術館や琵琶湖博物館をはじめ多くの社会教育施設があり、それぞれに高度な専門知識・技能を有する専門職員が配置されている。

 こうした社会教育施設は、様々な人が集まってくる場所でもある。学習の場に人を集めようとすると、参加する人が限定されるという問題があるが、発想を転換して多くの人が集まる場に学習の場を設定すれば、より多くの参加を得ることも可能になる。たくさんの人が自然と集まってくる社会教育施設の利点を生かして、それぞれの専門性を生かした講座等に加え、他の場所では参加者が少ない講座などを開設することは、生涯学習の推進上の一方策である。

 また、施設固有の機能にこうした学習の場や情報発信の機能を付加したり、琵琶湖博物館に見られる「フィールドレポーター制度」や「はしかけ制度」などのように学習成果の活用を図る取組として自主学習グループを支援したりすることにより、学習センター化が一層進められることになる。

 社会教育施設のほかにも、国や県、市町村、民間等が設置する様々な施設があり、これらの施設が県民の学習促進のために人的・物的両面にわたり一層の施設開放を進めることが期待される。

B.学校施設の開放
 地域住民の学習活動の拠点として、学校施設の利用促進が従来から求められている。

 特に、小・中学校は、懐かしい学び舎として地域の大人にとっても親しみがある場所であり、住民交流やスポーツ活動、地域課題の学習活動の場として適している。
 また、近年の青少年の問題行動の深刻化、地域や家庭の教育力の低下等の緊急的課題に対応するため、放課後や週末における学校の校庭や教室などの開放を進め、子どもたちが、地域の大人とともに、様々な体験活動や交流活動を実施する居場所として整備することも求められている。

 しかし、これまでの学校施設の開放は、その必要性が指摘されているにもかかわらず、主として施設管理上の問題から体育施設等の一部施設の開放に留まっていた。

 今後は、学校と地域との共同利用の立場に立って、所要の施設改修、教職員、保護者、地域住民だけでなくNPOを含めた各種団体による放課後や週末の施設管理、学校での「大人のための夜学」という新しい学習モデルの開発など、利用促進の方途を検討する必要がある。

3 公務員等の積極的な社会参加への期待
 教職員や行政職員が持つ専門的知識や技能は、社会問題の解決に有効であり、また、教職員や行政職員の社会参加は 、子どもたちだけでなく、他の大人たちに向けても社会参加を促すよいモデルになりうる 。社会参加活動を通した地域の様々な人々との協力や協働の体験は、これらの職員にとっても自分自身の資質を高め、職場においても良い効果を及ぼすものと考えられる。

 そこで、教職員や行政職員が、地域でそれぞれの専門性を発揮して活動できるようにするため、今後は、居住地はもとより時には勤務地の社会参加活動に積極的に取り組めるよう意識の変容を促す研修等の充実が望まれる。また、これら職員の専門性を生かした活動プログラムの開発を検討すべきである。

4 学習と社会参加を促進するための評価
 生涯学習の実践には、継続学習や発展学習、社会参加への意欲が不可欠であり、学習成果の評価はこれらの意欲を形成する上で有効である。

 一般に評価というと何らかのテストなどの類を連想しがちであるが、生涯学習は、本来自発的意志に基づくものであることから、学習者自身による自己評価を基本として、これからの評価を考えていく必要がある。

 例えば、学習成果を社会参加活動に広く生かすため、社会的評価として地方自治体やボランティア推進団体等が、ボランティア活動などの実績を記録・証明する「ボランティア・パスポート」を発行し、希望する学習者に交付すること、学習者が、インターネットを介して、自らの学習成果を積極的に外へ発信できる情報提供システムを構築することなどの検討が考えられる。

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