ホーム生涯学習課の取り組み滋賀県社会教育委員会議企業内における社会教育について とくに家庭教育について > 企業内における家庭教育への展望/実施をめぐる諸問題/当面の課題

昭和60年2月 滋賀県社会教育委員会議報告書

企業内における社会教育について とくに家庭教育について
企業内における家庭教育への展望
 簡単ではあるが、直接従業員の方々を対象としたアンケートの結果や企業の研修担当者からの聴き取りからから推察すれば、直接的にしかも目にみえて営利と結びつかない問題だけに今すぐこれを取り入れて実施しようとする意欲は企業側には見当らない。試行した2社についても1社は従業員の方々の自主的なサークル活動の一環としての企画であり、他の1社は職長クラスの研修会の残りの時間の割愛であったりして、今それに是非参加したいと望んでいる人たちであったかどうかは若干疑問である。

 しかし、アンケート4でも見られるように、話を聞きたい場所の1位に「職場」と答えた人が3割強を占める事やアンケート6の「勤務時間外でも参加する」という人が男子で87.5%女子で66.6%あることなどからもし企業で取り入れてもらえるならその普及はかなり大きなものとなることが予想されよう。しかし、公民館への自ら出かけるよりも出前で届けてもらう方が便利だなどと思われても困るので、あくまで公民館やPTAの研修会に休暇をとってでも出かけて行こうという意欲換起やきっかけづくりの仕掛人としての役割にとどめるべきではなかとうか。

 また、小委員会の中でも話題として出ていた「家庭教育がしっかりしていないために成人としての社会語が話せず電話恐怖症になったり、甘やかされて育っているためにわがままで協調性に欠けている」など企業のトップ(経営者)は実感として捉えており即効的な変容は望めないにしても、みんなで社会全体として人を作っていくという姿勢を企業が持ってもらえるならば教育としてのこうした企画は今後発展的に普及するであろうと思われる。

 しかし、こうした事業をいきなり企画して協力を求めてもおそらく戸惑いのあることが予測されよう。この検討に携わった委員の方々の中にも「その必要性をあまり感じないままに検討に入ったが、話し合いの回を重ね深まってくるうちにその重要性を認識した」と感じている人もあり、多くの実践例をつくり企業としてのメリットも加えてPRして行くことにより、この企画の重要性を認識してもらえるのではなかろうかと思われる。

実施をめぐる諸問題
 社会教育“とくに家庭教育について”これを企業内で行うことの意味は成人男子の多くがこうした学習会に参加できにくい事と、就労婦人の参加に伴う学習機会の提供がその基本としての発想であるが、本来、公民館で学習したり懇談したりする事柄を単に補完するにすぎないという原則を忘れてはならないという事である。

 また、大企業の場合は体制としていくつかの設備や福利厚生が整備されているが、中小企業中でも零細といわれる企業ではここにいう「企業内」という網の目からこぼれ落ちる事があり、「企業内における」という捉え方をどういう方法でみたして行くかも問題である。即ち学習機会に恵まれない企業の学習の場をどう設定するのかという事である。

 さらに社会教育のあるべき姿勢として企業へのおしつけになってはならず、また家庭教育が地域と密接な関係の中でこそ浸透して行く事を基本としなければならないということである。こうしたいくつかの課題をふまえてどういう方向で展開していくのかさらに地道に検討を加える必要がある。

当面の課題
 現在の青少年をめぐる多くの問題は家庭教育のみではなく学校教育にも、また広義にいう社会教育全般に多くかかわる問題である。しかし、とくに乳幼児期から児童期にかけて生活の大半を送る家庭にその多くの目をむけなければならない事は事実である。したがって、親がもっと自信を持って子どもの教育に当たることが緊要の課題であり、いいかえれば親の生き方や態度が子どもに与える影響の大きいことを考えれば、まず初歩的には“家庭教育に関心をもってもらうためにはどうすればよいのか”そしてその事が発展的には自分から学習しようとする姿勢や自分流の考え方へと親の成長につながっていくよう進めていかなければならない。そして、それがさらに親たちの連帯となってみんなで1つの問題を考え合う活動へと広がって行くことが大切であり、企業内の人間関係づくり、グループ作りにつながるような働きかけも大切であろう。

 そこで、まず60年度には「多面的な実態調査をしながらその一環としていくつかの企業をモデル的に取り上げて試行する」ことにしてはどうか。勿論そのためには、ライオンズクラブやロータリークラブ、商工会議所等の経営トップ集団へPRする事も必要であろうし時には商店街連盟などへ働きかけて調査試行することも必要であろう。なお、中小企業においてはその経営主自体が土地の人であり、会社ごと地域社会に溶け込んでいるという面が多いことから企業ぐるみで公民館へ出かけて行くという方法もあろうし、同業組合等も含めた多くの企業、商店街等を対象とすることも考えられよう。更に人材(講師陣等)の確保などデーターバンクの利用と相まって、その体制の整備についても調査検討が必要であろう。

 また、この事業を実施する場合は、市町村事業として位置づけることが望ましいと考えられるので、調査段階から市町村で取り組んでいくモデル方式を盛り込んでいくことも必要であろう。
 いずれにしても、家庭教育の重要性にかんがみその趣旨は大変意義ある事であるので、本年度および60年度は実態調査やいくつかの試行によって充分調査研究し、61年度からの着実な展開が得られるよう期待したい。

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