平成10年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書

夢のある家庭・地域社会をどう創りだしていくか

〜家庭の教育機能を高める支援方策について〜

夢のある家庭・地域社会づくりに向けて
1 家庭(親)の自助努力の促進を図ること
 「子どもの教育は親の責任」、今一度、親自身がそのことを自覚し、日ごろから親子の接触、対話、親子行事への参加等、親としての役割を十分に発揮するように努めるとともに、父親への期待が大きい昨今、そのライフスタイルや働く姿を見せることが、今、重要です。また、その父親を支援する行政や企業等の役割も求められます。

 更に、家庭の伝統・文化を築いていくために、家庭における祖父母や地域における高齢者の存在は大きく、長い人生経験の中から学ぶことが多くあります。しつけや家族間の心等、両者が共に学びあう機会をつくることも大切です。

  • 子どもの発達段階に応じた父親の子育て講座の開設
  • 個性ある家庭づくりに向けての情報の発信
    • 子育てマニュアルを親自身がつくる
    • わが家の子育て/発達課題を考慮したしつけ体験集の発行
    • インターネット等を活用した情報の発信
  • 乳幼児期の子育ての在り方についての効果的なPR
2 直接体験活動を重視すること
 都市化の進展、生活様式の変化等により、子どもたちは自然との接触体験や身体活動の機会の不足、また塾通い、TVゲーム等による交遊関係の不足から、様々な社会性や情操の発達阻害をきたしています。

 今日、自然とのふれあい体験や、物をつくることやそれを使うこと、更に、「見る」ということなど、より多くの感動体験の機会が求められています。

 このように、子どもが自然体験等の機会を多く持つためには、家庭内の取り組みだけでなく、親自身が社会教育関係団体をはじめ各種団体の活動に積極的にかかわり、子どもと共に取り組むことが望まれますし、学校、行政、企業などの様々な連携も重要です。

  • 家庭で自発的に取り組める直接体験活動のプログラム化
  • 直接体験活動についての事例集の発行
  • 学校と家庭、地域が共に取り組む継続的な直接体験活動の企画
    • フェスティバルの開催(学校と家庭、学校と地域等)
    • 学校における体験活動についての情報発信(開かれた学校に向けて)
    • わが家のよき伝統(承)活動等についての情報発信
  • 学区の中学校・高等学校連携の体験活動の促進
  • 物づくり教育の推進
    • 学校と企業が連携した工場見学や体験活動の積極的な組み入れ
    • 地域と企業との連携(見学会の企画等)
  • 既存の地域の組織活動の中への子どもを取り巻く直接体験活動の組み入れ
  • 滋賀独特のプログラム化したボランティア活動の促進
    • 環境・福祉分野
    • 乳幼児、高齢者へのボランティア活動
3 多様な「ひと」とのふれあいを深めること
 加速度的に進む今日の高齢社会に向け、各世代が安定と調和のとれた生活をおくることができるようにすることが、今、最も求められていることです。

 そのためには、世代間の精神的な結びつきが高められるような場を開発することが急務です。特に、人の温かさを肌で感じるには、身近な地域の高齢者の豊かな人生経験にふれることが大切です。

  • 昼夜を問わない空き教室の開放の促進(特に高齢者に向けて)と交流の深化
  • 教科、特別活動へ講師として起用(高齢者の人材活用を図り、相互理解を深める)
  • 三世代家族の交流事業(ボランティア活動、介護体験活動等)の企画
  • 地域の人間的なつながりをつくる活動や環境づくり(異世代交流型の地域行事への参画等)
4 地域の連帯を強めること
 家庭を支えるものに「地域」があります。都市部や農山村部等で実態の差はありますが、日ごろからの人間的なつながりや、地域の結束を強めることが、家庭の足腰をより強めることになることはいうまでもないことです。

 そのためには、地域の各種社会教育関係団体が、新しい時代の流れに沿った組織や運営の在り方を考えることや、地域の教育関係者をはじめ、学識経験者、経験豊富な人や、子育てで悩んだ親など、多様な人材を発掘・活用して、地域行事の継承や活性化が望まれます。

 また、ふるさとを愛し、誇りに思う次世代の子どもたちを育成する上で、地域の文化伝承への意図的な取り組みも必要です。

  • 身近な地域の気軽な子育てふれあい相談者の発掘、組織化
  • 身近な地域の子育てネットワークの組織化
  • 広域的な仕事をする派遣社会教育主事によるリーダーの養成
  • 地域婦人団体や子ども会等の活性化と組織的な取り組み、またその活動の場づくり
  • 地域行事の企画段階からの子どもたちの参画
5 子どもの「あそび」に本気に取り組むこと
 子どもたちの「あそび」を考えるうえで大切な要素として、「仲間」「空間」「時間」の三つの「間」があげられます。

 仲間は、群れ遊び、様々な体験をしながら、人にもまれ、自我をぶつけ合いながら人間関係や社会性など生き方を学びます。

 空間は、子どもたちの出会いや遊びが繰り広げられる場であり、今、その環境や機会づくりが必要です。

 時間は、日々の生活の中からあそびを生み出すゆとりのことであり、情報過多と多忙な日々の中、自らが選択しつつ時間的なゆとりのつくり方が求められます。

 「あそび」に本気で取り組むためには、親、地域社会が学業優先の考え方から、「あそび」の価値を再認識することが重要です。

  • 遊びや生き方が学べる「あそびの広場」の開設
  • 自然の中での遊び場(里山や空き地感覚のところ)の提供
  • 地域の企業の開放(見学・体験等、物づくりをあそびのターゲットに据える)
  • 各種公共施設、民間用地の開放
6 リーダー(特に青年層)の養成を図ること
 子どもの発達段階から見ると、青少年期において一生付き合える友達を得ることができるともいわれ、地域に根ざした青少年活動の支援とリーダーの発掘、養成は重要です。

 先の阪神・淡路大震災時の青年たちのエネルギッシュな活躍等を見ても、いま青年層の出番を考えるときでもあります。

 そのためには、親や大人が青少年に積極的に働きかけ、様々な活動を支援するなど、育成者のネットワークづくりが大切です。

 また、近年の子どもの減少への対応に向けては、各団体が可能な限り横の連携を深めることにより、活動を共有化するなどのアイデアが求められます。

  • 青年団および青少年団体組織の活性化、ネットワーク化の再構築
  • 心身に悩みを持つ青年たちの交流事業の開発
  • 地域の催しへ、地域に居住する教育関係者等、多様な人材の出番、活用を推進
7 社会倫理の確立を図ること
 高度経済成長期から今日まで、物質文明は豊かになってきましたが、反面、精神的部分が今日問題視されているなか、心の教育を再構築することが重要です。
  • 学校教育における心の教育の充実
  • 大人のモラルの再構築
8 各種情報、資料提供の充実を図ること
 経験不足の若い親たちは、各種の情報についての入手方法やそのネットワーク化を期待しながらも、その窓口を見つけられないままに過ごしていることが多くあります。

 相談体制の整備や、だれもが容易に検索できる情報提供システムの構築が望まれます。

  • 家庭教育情報資料の提供窓口の組織化
  • 出産前の親への相談・啓発システムの確立
9 積極的な啓発活動の展開を図ること
 今日、家庭や地域は青少年の健全育成に重要な教育機能を持っていることを啓発し、社会全体の意識を今一度高めることが急務であります。
  • 滋賀の「家庭の日」(第3日曜日)の意識の再醸成と啓発活動の強化
  • 「家庭の日」における県立施設の開放

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