平成10年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書

夢のある家庭・地域社会をどう創りだしていくか

〜家庭の教育機能を高める支援方策について〜

親子を取り巻く現状について
 昨今の社会の変化は急速であり、私たちは日々数多くの問題に直面して生活しています。もちろん、その渦の中に家庭にかかわる問題も存在します。
 ここでは、まず始めに親子を取り巻く今日の急激な社会の変化の中で、いま問題となる点について社会の変化、家庭、地域のそれぞれの側面から概観してみました。
1 社会の変化について
 今日、家庭を取り巻く社会の環境は、親にとっても、子どもにとっても非常に多くの問題点をかかえています。また、これらの問題点はひとつの答えで解決されるものでないことは、だれもが感じているところです。

 とりわけ、現代社会のなかで、今日まで指摘されている問題点のひとつである「高学歴志向」の風潮は、その中でも大きな部分を占めているようにも思われます。

 親自身は、日々の仕事に追われ、わが子の向ける目や会話は、高学歴を期待する塾通いや学業についてが大半を占め、心にゆとりのある会話や生活よりも、学業優先で生活しなければならない現状が伺えます。

 このため、子どもの生活も自然と追いつめられて、心にゆとりを持って友達と接する機会も減り、また学業以外の自然体験等も不足するなど、このことが様々な問題行動を引き起こす要因となっているとも言われています。

 さらに、物があふれた現代社会の中で生活する子どもたちは、親たちが生きてきた時代とは違う消費社会の中にいて、常に何でも手に入り、情報も容易に入手できます。そのため、物を大切にする我慢する心が衰えたり、TVゲーム等の影響により、実体験と疑似体験の混乱が生じるなど、心身への影響が心配されています。

2 家庭について
 核家族化の進展により、親自身、子どもへのしつけや教育に自信がもてず、過保護、過干渉、あるいは放任の養育状態に陥り、悩みを抱えつつも相談の術もなく、孤立する親が増えつつあります。更に、その悩みの蓄積から、子育てから逃避する母親や、子育てに参加しない父親が増加しています。

 また、日常生活では手ごろで便利な冷凍食品、インスタント食品等の普及により、家庭内での食生活が変化し、手作りの味、家庭の味が薄れ、子どもの心身の発育に少なからず影響を及ぼしていると指摘されています。

 一方、子どもにとっての家庭の現状は、共働きの親と個室化した家庭環境の中で、家族との日常生活の会話も少なくなり、家庭の一員としての自覚や家族に対する魅力を感じなくなってきています。

 また、核家族化の進展は、祖父母の介護や死に直面することもほとんどなく、家族としての共同体験や生活体験の中から生き方を学んだり、命の尊さを実感する機会が急減しています。

3 地域について
 本来、地域の教育力は大人と子どもが共に地域の中で生活していることから生まれてくるものです。

 しかしながら、今日では個人主義的な生活のなかで相互扶助機能が低下してきています。
 地域の大人の現状を見ても、大人同士や子どもと大人の人間関係が希薄化し、また、お互いを知らない現状があります。従って、悪いことに対しても見て見ぬふりをしてしまうなど、大人としての役目が果たせていません。

 地域社会での子どもの生活を見ても、TVゲームの普及や、遊び場の減少によって、地域の子が群れあそぶ場面が少なくなってきました。

 また、異年齢間の子どもの交流機会の減少から、仲間の連帯感や礼儀など子ども同士が切磋琢磨して育ちあう場面も減少しています。

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