滋賀県社会教育委員会議報告書

成人教育の充実活性化方策について

〜21世紀社会に生きる大人の社会参加促進のための学びとは〜


(平成15年12月)
社会参加と学び
1 学びの成果を生かす
 ライフスタイルの変化や価値観の多様化、自由時間の増大の中で、人々はより多様で高度な学習機会の充実を求めるようになるとともに、学んだことを社会に役立てたいとの思いを次第に強めつつある。

 このため、今後は、より豊かな内容の学習機会を提供するとともに、「学習で得た知識・技能を地域に役立てたい」「学習の成果を生かして社会参加したい」などという学習者の思いをどのようにして実現させるのかが問われている。

 学習成果を活用した社会参加を促進するには、講座主催者等が講座終了後の活用希望調査等を実施したり、社会参加活動の場を紹介するなどの支援が必要であり、社会参加のために必要なアドバイスを行う「フォローアップ委員会」の設置も検討すべきである。

2 社会参加を促進するための学習機会の提供
 個人や団体が行うボランティア活動やNPO活動などの社会参加活動は、活動者自身の自己実現のために重要なものであるのみならず、地域の課題解決のためにも不可欠なものとなっており、地域社会の発展のためには、こうした活動を積極的に促進することが必要である。  

 社会参加活動を行う場合には、活動分野にかかる一定の知識や技術が必要であり、職業生活において既に習得している場合を除けば、多くの場合は事前の学習によって身につけることが必要である。

 そこで、地域において各種講座等を企画する時には、それぞれの地域における課題を総合的に把握し、その解決のためにどのような分野の社会参加が求められているかを整理した上で、それらの分野に関する学習機会を提供することによって、地域社会の発展につながる社会参加を促進することが重要である。

 なお、その際には、基礎的な学習からより専門的な学習へ、さらには社会参加へつながる学習へとステップアップできるように、行政や大学、NPO等様々な学習機会提供者が連携をとりながら体系的に学習機会を提供するなどの工夫が求められる。

3 ボランティア活動の充実・発展
 ボランティア活動は、学習成果を生かし、体験的にその成果を深める実践の場そのものであるとともに、さらなる学習の発展への動機付けにもなるものであり、自己開発、自己実現のための学習活動そのものである。

 学習を進める中でボランティアの心が芽生え、ボランティア活動を通して、自己実現と社会貢献の喜びを知ることによって、社会参加は充実・発展していく。

 地域におけるボランティア活動を推進するためには、地域社会に対する住民の関心を高め、まちづくりへの参加を促進することが必要であり、各種啓発や求心力のあるイベントによるきっかけづくりを進めることが重要である。 

 また、ボランティア精神の涵養のためには、子どもの頃から、様々な社会参加活動を経験させることが重要である。完全学校週5日制の実施や総合的な学習の時間のプログラム開発により、小・中・高校生のボランティア学習が広がりと深まりを見せているが、一層の充実が望まれる。

4 コーディネートの必要性
 学習成果が、地域社会の中の様々な社会参加活動に効果的に生かされるためには、学習成果を提供しようとする側とそれを活用したい側、双方のニーズの適切なマッチングが必要である。

 また、こうした学習成果の有効活用に加え、実際の生活体験や職業体験から得た様々な知識や技能を持つ人たちの社会参加を促進する観点からも、活動への参加を希望する者とそれを必要とする者をコーディネートする機能を持った機関や団体の確保が必要である。

 コーディネートにあたっては、ボランティアを必要としている人や機関などのニーズの情報を収集し、具体的な活動メニューとして整理する一方、学習修了者やボランティア参加希望者については、知識・技能・経験などに応じた活動希望を調査し、整理する必要がある。このように整理された情報を双方に提供することで、ミスマッチを避けることができる。

 インターネット等によるボランティア活動などに関する情報提供の充実は元より、活動したい人と活動を求める人、学習者や行政機関、民間団体、NPOなどを“つなぐ”コーディネーターの存在が極めて重要である。このコーディネーターには、情報処理能力やコミュニケーション能力、調整力など多様な能力が求められ、こうした専門的技能を有するコーディネーターの養成についても検討する必要がある。なお、これらの検討にあたっては、地域に密着した活動をしているNPOも視野に入れるべきである。

5 ネットワークの形成
 社会参加の内容は、子どもの健全育成、環境保全、福祉など行政の多くの領域にまたがっており、それらの活動を促進するためには、生涯学習推進本部機能を生かした部局間の連携強化はもとより、行政、団体、企業、NPOなど様々な機関や団体の協働を可能とするネットワークの形成が必要である。

 例えば、学校を支える地域社会づくりを進めるために、学校、行政、関係団体、地域住民だけでなく企業やNPOをも巻き込んでいくことが重要である。中・高校生の職場体験などのインターンシップのプログラム開発には、企業、NPOの持つノウハウの発揮が期待される。

 また、生涯学習インストラクターや生涯学習ボランティア、ボランティアコーディネーターなどの人々が人的ネットワークを形成することによって、住民のニーズをより反映した取組の展開が可能となる。

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