滋賀県社会教育委員会議報告書

成人教育の充実活性化方策について

〜21世紀社会に生きる大人の社会参加促進のための学びとは〜


(平成15年12月)
参考事例4 (「3 学びと社会参加を促進するための環境づくり」関係)
 草津市には、市がメンバーを公募し、公民館の役割を見直す調査等をしている「草津まちづくり市民会議」がある。同グループは、「公民館で実現可能な事業を計画する」というテーマでワークショップを実施するなどし、「公民館への提案」という調査報告書をまとめ、公民館という社会資源をどう生かすのか模索している。    

〇 調査にあたっての問題提起

 本研究は、草津の「まちづくり」の課題の一つである「地域コミュニティとテーマコミュニティの連携」について調査することが目的であり、そのために公民館に注目した。市民活動団体にとって、自分たちのテーマを取り組む拠点を地域で探す時、公民館だけではなく自治会館や集会所なども入ってくるだろうが、とりあえずまず第一歩として公民館に絞ることにした。

 私たちは自治会については、現在の時点で「共益自治組織」としてとらえている。つまり、一定の区画範囲で暮らしている全所帯内での共通課題や地域で必要と思われることについて、決め活動している組織であると考える。最近全国的にも、地域コミュニティを自治会という組織だけで、ひとくくりにまとめられなくなってきた。その地域で暮らしている人が行っているコミュニティ活動が多様になってきて、まとめることが難しくなっているのと、都市型社会・情報化社会が地域という概念を変え始めているのである。

 これからの地域社会は、多様な組織・団体が、それぞれの地域を暮らしやすくするためにそれぞれのノウハウを紡ぎ織り成すとともに、地域の持つ課題を解決しようとする自治のあり方が問われている。自治会の自治のあり方を見直し、もっと地域の多様なコミュニティ活動を受け止められる人と拠点が改めて必要となってきたのである。

 一方、テーマコミュニティは、いわゆる市民活動団体といわれるもので、従来からのサークル、ボランティア団体、市民活動団体また新しく立ち上がってきたNPO法人なども含めて、多様に存在している。公益非営利の団体を幅ひろくNPOと呼んでいて、それぞれ活動するテーマを持って、そのテーマの実現に向けて動いている。課題に迫っていくうちに様々な団体とのネットワークが必要となり、テーマを実現するために具体的に地域の場で動く場面も生まれてきている。

 最近は草津市でも、地域で任意に立ち上げられた「○○地区まちづくり協議会」や、「○○の自然環境を守る会」などの地域テーマ別の団体も珍しくなく、また地域協働合校のような地域ネットワーク型の組織などもあり、必ずしも地域とテーマを分けることはできなくなってきたように思われる。

 草津市ではまちづくりの拠点として、1998年に草津コミュニティ支援センター、2002年に草津市立まちづくりセンターがオープンした。草津市立まちづくりセンターは、NPOのサポートセンターであるとともに、地域のまちづくりの拠点として住民に提起されている。草津市ではまちづくり部局と生涯学習課の横つなぎの施策によって、「地域コミュニティ」と「テーマコミュニティ」が連携するための中心拠点として草津まちづくりセンターを位置づけようとしている。

 本研究のテーマである、公民館は普通、生涯学習施設として教育委員会の管轄にあるが、草津市では、まちづくり部局との関連を大きく捉えている。まちづくりセンターと公民館の有機的なつながりについても課題であり、本調査ではそれについても「ヒアリング」を実施している。現在のところ、公民館は住民にとって身近で、自由に開放された空間であると言えるが、地域の多様な「課題」を多様な「ひと」によって解決する空間にはなりえていない。そのために、公設のセンターはどのような役割を担うのだろうか? 

 また「ひと」の問題で言えば、地域の「ひと」が地域のテーマを解決しようと努力しているのを応援する形で「長期的展望で新しい公民館像のあるべき方向を示していく教育的視野」を持って支援するコーディネーターの役割を「だれがどれだけ」果たせるのかという新たな課題が出てくる。草津市では、2002年の4月より公民館にコミュニティコーディネーターが配置されたが、公民館職員も、従来の地域コミュニティとテーマコミュニティを包括した事業展開について模索を開始したばかりであると思われる。

 私たちは、それらのいくつかの視点を客観的に眺められる位置にいる「市民会議」という、新しい市民セクターである。だからこそ、この課題に何らかの視点が示せるのかもしれないと思い、この報告書をまとめることにした。

 これを読まれた後で、今までの地域の歴史・厚みのある活動に対して尽力された部署の方は、今回提起させていただくことに対して、かなりの「異質性」を感じられることもあろうかと思うが、その異質性や視点の違いこそが新しいまちづくりのスタートになると私たちは思っている。

*引用:平成14年度 草津市まちづくり市民会議からの調査報告書「公民館への提案」

| 戻る | 次へ |