滋賀県社会教育委員会議報告書

成人教育の充実活性化方策について

〜21世紀社会に生きる大人の社会参加促進のための学びとは〜


(平成15年12月)
参考事例6      (「4 子育てを通した大人の学び」関係)
地域住民による社会教育活動
〜演劇の創作活動を通した活力あるコミュニティづくり〜

湖北町 劇団モモ

  「劇団モモ 」は、演劇を通して子どもたちが生き生きと活動し自分を表現できる場をつくることや、地域の人たちがつながって子育ての環境をよくしていくこと、豊かな文化を生み出していくことを願って活動している住民による劇団です。

 1998年9月、湖北町の移動子育て支援活動「ひまわり広場」に参加するお母さんと子育て支援ボランティア、約20名によって結成された「劇団モモ」が、人と地域の輪を広げ、2003年現在、子どもから様々な年齢の大人まで、約150名のメンバーとなり湖北地方を拠点として、演劇など舞台芸術の創作を行なっています。

大人たちが元気であってこそ、子どもたちが健やかに育つ環境が生まれる。子どもたちのために、何かが出来る自分を発見することで、大人が元気になれる。
 1998年、「劇団作って、広場に参加してくる子ども達に楽しんでもらえるお芝居を創ろう!」という、子育て支援ボランティアの呼び掛けによって「劇団モモ」が誕生しました。そして、初演作「昔話ももたろう」は「ひまわり広場」に参加していた0歳から3歳といった小さな子どもを持つ若い母親が役者となり、製作、発表することになりました。練習中の子守りや、舞台の裏方は、子育て支援ボランティアが担当しました。
「昔話ももたろう」に出演した、母親の感想より
 「劇団モモ」の活動を通して、私は二つのことを得ることができました。一つは「子どもたちの愛情の確認」。上演中、子ども達は最前列に陣取り、私を見守るように見てくれていました。もう一つは「新しい自分の発見」です。やる気さえあれば、何でもできるんだと実感し、各方面の方々と交流を持つことができ、視野が広がり、チャレンジ精神を持つようになりました。子どもが破った障子を張り替えようかどうしようか、そんな様な子どもに対する悩みは尽きることはありません。でもそれをほんの少しやわらげてくれる機会はあります。そして、参加することによって下を向いていた自分は、前を向いて歩けるのだと実感しました。
地域と学校との連携。温かい連携によって、生き生きとした活動の展開が可能になる。
 1999年、「小中学生とも一緒に活動したい。」との声が上がり、湖北町内の小中学生に、キャストスタッフの募集を行なうことになりました。募集によって集まった23名の小中学生が舞台に立ち、大人はスタッフとなって、「ミュージカル白雪姫」の製作を行ないました。製作に当たっては、多くの地域の方々や学校・園の協力を得ることができました。

 以来、小中学校・幼稚園・保育園の先生方には、活動をご理解いただき、温かいご協力を頂いています。また、民生委員児童委員会、青少年育成町民会議、子ども会指導者連絡協議会など、青少年育成関係団体へのご協力を依頼し、支援して頂いています。2000年よりは、湖北町の中学校において、校内の部活動と並んで、生徒が参加することのできるクラブ活動として、「劇団モモ」が位置付けられました。

 2001年、「北近江よいやまっかロック」という音頭を製作しました湖北町のすばらしさを歌った、童謡風の音頭です。この音頭は、町内の小学校・幼稚園・保育園の運動会などで踊って頂きました。また演劇活動は、文化芸術活動ではありますが、2002年より、湖北町の地域総合型スポーツクラブの一つとして位置付けられています。

「ミュージカル白雪姫」製作スタッフの感想より
 この作品は、たくさんの地域の方々のご協力によりできあがりました。大道具の製作は、商工会青年部の方々が買って出て下さいました。保育園の園舎や、地域福祉センターで練習させて頂きました。公演には、さわやかホームデイサービス利用の方々や、町内3つの保育園園児をはじめ、たくさんの観客のみなさんが大きな声援を送ってくださいました。多くの方々の温かい心に包まれて、「ミュージカル白雪姫」が完成しました。
■大きな1つの家族のようなコミュニティの形成。大人も子どもも、異年齢集団の中での育ち合う。
 親子で活動に参加できること、年齢・地域などを問わず、誰でも参加できることが、劇団モモの魅力です。活動場所には、0歳の赤ちゃんから70歳代のおじいちゃんおばあちゃんまで集まって、1つの大きな家族のような雰囲気が漂っています。大きな子どもが小さな子の面倒を見たり、親同士は子育ての情報交換をしたり、年配の方からお知恵を借りたり、みんなで子育て育ち合いをしています。

 本年度は、子どもも大人も10名くらいのグループに分かれて作品を創り、お互いの作品を発表し合おうということになりました。小中学生のグループは、小学生の頃から活動に参加していた中学生が、演出の勉強をして、それぞれのグループのリーダーとなり、オリジナルの作品を製作中です。中学生が、今までに学んだことを小学生に伝えていこうとしています。

■人を発見し、人と人とを結び、どんどんとネットワークを広げていくコーディネーターの存在があった。魅力的な広報づくりにも、常に力を注いできた。
 演劇作品の製作のためには、様々な技術、能力が必要です。プロではなくても、すばらしい才能を持った人たちが、地域にたくさんいらっしゃいます。アンテナを高く持ち、まめに足を運び、キラリと光る人を発見する、そして次々と人と人とを結んでいくコーディネーターの存在が、活動の発展には不可欠です。また、活動参加者同士が情報を共有し、活動への共通理解をするために、また多くの人に活動を知って頂き、仲間の輪を広げていくために、広報活動はたいへん重要であります。「劇団モモ」では、活動の運営を行なう代表委員会の中に、広報担当者を役員として位置付け、わかりやすく魅力的な広報づくりに努めています。
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