昭和59年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書

公民館における学習および管理運営のあり方について

−公民館利用の現状と問題点−

2.公民館に求められているもの
1.これからの公民館が果たす機能・役割
 これからの公民館は、地域住民の生涯学習推進の拠点としての役割を果たすものであることが明らかにされている。すなわち、公民館は住民の生涯にわたる学習を支える教育機関として社会教育の事業を実施し、住民意識の高揚と地域社会の発展に寄与することを求められている。
(1)総合的な教育機関としての機能
ア.基幹施設としての総合機能

 地域社会に存在する他の施設、機関との連携を図りながらそのネット・ワークの基幹施設として公民館が機能することであり、また、そのために住民の多様な学習要求に対応し得る「総合性」が必要とされる。

イ.もの・人・事業の総合体としての教育機関としての機能

 「もの」と「人」と「事業」が統合された教育作用を営む機能としてとらえることが必要である。すなわち、施設、設備の整備(もの)、専任の専門的職員の配置(人)、計画的・系統的・継続的な営み(事業)の展開が有機的に統合されることが求められる。

(2)地域の学習施設としての機能
 公民館は、地域の学習施設として次のような機能を備えるよう努めなければならない。

ア.地域に根ざした施設

 一定の地域社会の背景として存在し、地域住民が生活課題や地域課題を発見し解決する場となる。

イ.地域住民と結ぶ場

 一定の地域住民を対象とし、それらの住民相互の結びつきを高めていく場となる。

ウ.地域を高める施設

 地域の生活環境を整え、地域文化を振興することを通して地域社会の向上発展をめざす場となる。

2.当面必要とされる施策
 公民館が住民の要求にこたえながら、その生涯にわたる学習を保障する教育機関として、また、住民の生活を高める豊かな環境をつくりだす地域の学習施設として、これからの公民館は特に次のような点に留意しながら学習活動や事業の充実を図ることが望まれる。
(1)学習活動
◎学級・講座の充実

 学習方法については、話し合いを重視するとともにフィルム・フォーラム、放送利用学習、見学、調査、ワークショップ等を適宜取り入れるなど、学習の目的や内容にふさわしい方法をとるよう意欲的に取り組む。

 青少年に親しまれる公民館づくりをめざすこと。また、子育て婦人や成人男子、老人等への積極的な方策が待たれる。

 学級・講座等の内容が偏重することを避け、住民の生活課題や地域課題の解決に結びつく学習を充実する。

◎青少年・グループの育成

 グループ活動によって地域の民主化や連帯意識の形成が促進されることは、今日の社会においてきわめて意義深いことである。

 学級・講座終了者の自主学習グループの育成が公民館経営診断集計で80%と高い数値を示して好ましい傾向にあり、今後いっそうの配慮が待たれる。公民館の夜間使用についても好意的でありたい。

◎人権意識の高揚

 人権尊重の教育を公民館事業の根底におくことはいうまでもないが、その充実のうえに地域総合センターや集会所等と連携を図り、実地に学んだり、交流学習をすすめる等、また、職員や指導者の相互協力を推進する。

◎個人利用の促進

 住民に広く親しまれる公民館をめざすうえで、これからは個人利用を推進していかなければならない。

◎集会事業の拡充

 地域住民の親交と連帯をめざす公民館として、各種の集会事業を開催して、人々が集い・ふれ合う場を設けていくことが望ましい。

◎情報提供・相談事業の充実

 公民館報(広報)が定期的に発行されているのが、公民館経営診断集計によると全体の48%になっている。

 今後は、公民館活動をすすめる中で、館報発行を正しく位置づけ、情報の収集や提供のシステムを確立するように努める。

 計画的・継続的な発行をめざし予算の確保に留意したい。

(2)管理運営
◎施設の適正な配置

 住民にとって利用しやすい施設の位置としては歩いて行ける距離であり、各公民館を中心として対象区域の面積が16km2以内の場合に利用の効果が高いといわれ、こうした点を考慮しながら1小学校区1公民館の実現が望ましい。

 しかし、市町村の実態によって条件も大きく異なることであり、大切なことは今後公民館を含め教育施設の総合的な整備計画をたて、それによる実現を図ることが必要である。

◎公民館職員の体制の整備

 総合的な教育機関としての機能を発揮するうえで、職員体制を整備することは何よりの急務であるといわねばならない。

 特に事業の適切な企画と実施、及び社会教育関係団体や各種学習やグループの育成などは専門的職員の資質や技量に負うところが大きく、当面、派遣社会教育主事の充実や専任・常勤職員の配置に最善の努力が払われることが必要である。

◎職員研修の充実強化

 職員の資質向上のため、職員研修の方法や内容について抜本的な検討を加え、研修の体系化と内容の充実が図られなければならない。また、職員の自主的な研修を促すとともに、研修の機会を職員に保障することが必要である。

◎関係機関・施設との連携強化

 公民館事業の実施に当たっては、関係機関や施設との事業提携、情報交換、人材交流等の協力関係により、公民館機能の拡充を図っていくことが望まれる。

 例えば、公民館が図書館、資料館あるいは体育館施設 その他各種の施設等との連携のもとに事業を展開することが考えられる。

◎教育機関と行政機関の機能の明確化

 教育機関である公民館と、行政機関である教育委員会事務局との間に、職員配置や財政について明確な機能分化がなされていないところも見受けられる。公民館が住民を対象とする教育事業を総合的に展開する教育機関として正しく位置づけられるよう改善が待たれる。

◎公民館運営審議会の機能

 公民館運営審議会の設置は、地域住民の意向を公民館経営に広く反映することにあるので、委員の構成や会議の運営に十分配慮し、審議会のはたらきを高めることが大切である。

  1. 委員の構成については、2号委員(団体・機関の代表)のバランスを図ること。また、住民組織や利用団体の代表などその地域の特性にふさわしい団体の代表も考慮する。
  2. 住民の意向を公民館事業に反映させるという役割が十分に果たれるよう会議の回数や運営について配慮する。
  3. 館長の任命について審議会の意見を聴く機会を設ける。

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