平成5年10月 滋賀県社会教育委員会議報告書

生涯学習社会における施設の充実と
ネットワーク化について(建議)
3 現状と問題点
(1)「施設」の現状と問題点
 生涯学習関連施設については、滋賀県学習情報提供システムに登録されたものの中から、生涯学習の機会や場の提供を主目的として設置されたものに限定しても、1,585施設におよぶ。さらに、県においては、(仮称)びわ湖ホールや(仮称)琵琶湖博物館をはじめ各種施設が、大型プロジェクトによって急速に整備されつつあり、市町村においても、公民館、文化ホール、図書館、郷土資料館、またはこれらの複合施設や総合スポーツ施設などの整備が積極的に進められている。

 施設については、次のような問題点が考えられる。

  1. 多くの施設があるにもかかわらず、県民は身近なものを除いては、どこにどんな施設があるのかわからない。

  2. 施設の数は増える一方であるが、職員、指導者が少ないため、貸館業務に追われ学習機会の提供(ソフト事業)が十分でない状況にある。

  3. 学習機会(ソフト事業)の内容が変化に乏しく、各施設の利用者も固定化してきつつある。

  4. 青少年の育成について、これまでは学校教育に依存しがちであったために、多くの施設で青少年を受け入れる体制が必ずしも十分でない。

  5. 施設の運営に主体的に参画し、施設を活性化させる施設ボランティアは、福祉関係施設、図書館、児童館等で一部みられるものの、公民館、資料館、文化ホール、スポーツ施設等では、極めて少ない。

  6. 補助事業や、例年の事業をこなすのに精一杯で、館(施設)の特色を思い切って打ち出すことが十分できない状況にある。
(2)「ネットワーク」の現状と問題点
 県下のネットワークに関する現状と問題点は、次のとおりである。
  1. 現在、県と市町村および一部の県立施設とをオンライン化した「学習情報提供システム」が稼働されており、年間37,024件の利用(平成4年度)がある。保有データは、人材、視聴覚、施設、催し物等10領域にわたり、33,730件(平成4年度)である。しかし、情報収集のルートやシステムが未整備であり、利用については市町村間に格差が見られる。

  2. 現在、県立図書館を核として、県内13(平成4年度)の公共図書館を結ぶ図書館オンラインシステムが整備されている。しかし、図書館整備はまだ十分ではなく、公民館図書室や大学・学校図書館とのオンライン化も図られていない。

  3. 社会教育、文化、体育、福祉、健康、商工労働それぞれの分野において、同種の施設間で連絡協議会等が設置されている。現在、わかっているだけでも滋賀県公民館連絡協議会、滋賀県公共図書館協議会、滋賀県体育施設協会、滋賀県老人福祉センター協議会など13の連絡協議会がある。しかし、そこでは、職員の研修会や事業内容の情報交換に止まっていることが多く、人材、施設、備品等についての交流や事業での連携は少ないようである。

  4. 県においても、市町村においても各部各課にまたがる生涯学習関連事業は非常に多く(県では平成5年度、305事業)、各施設で同じような講座を開設したり、同じ時期に開催したりして、住民に戸惑いを与えることがある。

  5. 民間の施設(カルチャーセンター等)において、少なくとも47か所で316、また、県域の財団・協会等でも、4か所68以上の講座・教室が開設されている(平成5年1月調べ)。地域によっては、公民館等の公共施設の講座・教室と競合するものもある。

  6. 生涯学習の拠点、まちづくりの核、あるいは情報の基地として、公民館の果たす役割に大きな期待が寄せられている。しかし、限られた今の職員数では、地域ネットワークの中核としての業務に手が届かず、加えて、公民館には生涯学習関連施設・機関をコーディネートするだけの権限を与えられていないのも実情である。

  7. 高齢化による問題は、高齢者自身の問題に限らず、 「高齢社会へ向けてどう生きるか 」、「高齢者福祉はどうあればよいか」など県民一人ひとりの問題であるが、その学習情報の多くは、福祉関係機関・施設に止まっている。

| 戻る | 次へ |