平成5年10月 滋賀県社会教育委員会議報告書

生涯学習社会における施設の充実と
ネットワーク化について(建議)
4 基本的な考え方
(1)「施設の充実」についてNPO誕生の背景
(ここでいう「施設の充実」とは、主に既存施設の機能の充実のことである。)

1.施設におけるボランティア活動を推進すること

 施設ボランティアの受け入れは、ボランティア活動をする人に対し、生涯学習の場の提供になるとともに、施設運営への住民参画によって施設の活性化が図られる。

 そこで、県下のあらゆる施設において、施設ボランティアの積極的な受け入れに向けた条件整備が望まれる。

2.学習プログラムの開発・充実に努めること

 キャンプ場が焼杉教室を、スキー場がスキー教室を、文化会館が歴史講座を、図書館が古文書教室を−−−といったように、近年では、各施設が単に施設や資料の 開放・提供に止まらず、積極的に学習機会の提供を行うようになってきている。

 そこで、公民館をはじめ各公共の施設にあっては、より多くの人が主体的に参加できるように、きめ細やかな学習プログラムを準備する必要がある。

 さらに、他の関係機関・施設との連携を強化して、さまざまな現代的課題に対応した実践に結びつく学習プログラムを開発・充実していくことが大切である。

3.青少年が集まる施設運営を図ること

 青少年の学校外活動については、学校週5日制の実施にともなって、一層重視されるようになってきた。このことは、青少年が地域において異年齢の仲間と自発的に活動したり、多様な直接経験を積み重ねたりする中で、自主性、創造性、社会性等を養おうとするものである。

 そこで、さまざまな施設において、青少年を対象とした教室・学級やイベントを開設したり、青少年の活動のスペースを設置したりして、青少年が自発的に集まり、事業に参画できるような条件整備が求められる。

4.その他各種施設の特性に応じて運営の充実を図ること

 人々の学習ニーズはより多様化・高度化して、各種施設への期待が高まりつつあるが、いずれの施設も増える一方であるにもかかわらず、人的体制が十分でない。こうした期待に応えていくためには、職員の確保と適正な配置が望まれるとともに、これまでの事業を精選し、各々の施設の特性(施設としての専門性、地域の特色)を生かした事業を展開することによって、個性豊かな施設運営がなされるよう期待したい。

(2)「ネットワーク化」について
 一口に「ネットワーク」といっても、その内容は施設、事業、人材、その他の情報など多岐にわたり、圏域も学区、市町村から全県や全国までさまざまであるが、ここでは、当面必要と思われるネットワーク化のあり方を、課題別(内容別)分野別(種別)の大きく2つの観点に分け、まとめることにした。
1.課題別(内容別)にネットワークを構築すること

 昨年7月、国の生涯学習審議会答申で示された「当面重点をおいて取り組むべき4つの課題−ア.社会人を対象とした体系的・継続的なリカレント教育の推進、イ.人々の学習成果を生かせるボランティア活動の支援・推進、ウ.青少年の学校外活動の充実、エ.時代の要請に即応した現代的課題に関する学習機会の充実−」についての取り組みは、単独の機関や施設だけの努力によって成し得るものではなく、関係機関・施設相互の連携協力によってはじめて内容の充実したものになると考えられることから、それぞれの課題にしたがってネットワークを形成することが望ましい。

2.分野別(種別)にネットワークを構築すること

 これは、いわゆる同種または類似の施設間でのネットワークであり、県下で既に13以上の施設(連絡)協議会ができていることから、この種の施設ネットワークの整備は、比較的取り組みやすい部分であると考えられる。

 ネットワークづくりにあたっては、“互恵性”がネットワーク強化の基本であるといわれるように、各施設が事業の効率化、情報交換、人的交流、学習プログラムの交換による相互の利点を意識して、積極的に取り組まれるよう期待するものである。

 ここでは、代表的なものとして、ア.会館、公民館等、イ.図書館、ウ.スポーツ施設、エ.福祉・健康関係施設の4種別についてまとめることにした。

(3)ネットワークの核づくり
 ネットワークを構築するうえで、そのイニシャチブをとるべき“核”が必要である。その“核”となる施設は、ネットワークの圏域によって、また分野によっても異なってくるが、いずれにしても、生涯学習推進の重要なセンター機能の1つとして位置づけることができる。

 ここでは、次の3つの観点から、ネットワークの核づくりについて提起したい。

1.地域(市町村等)におけるネットワークの核づくりを進めること

 いずれの市町村においてもネットワークの核となりうるのは、やはり地域活動の拠点としての公民館である。広い学習スペース、多くの学習機会、豊富な学習情報、それに相談員や指導者を備えうる公民館は、住民にとって最大の学習拠点であるとともに、地域のあらゆる生涯学習関連施設間の連絡・調整と連携・協力を推し進める“核”となるよう大きな期待がよせられる。同時に、そのコーディネーターとなる公民館長の責務は重大で、今後一層館長の権限と指導力の強化が望まれるところである。

 ただし、公民館に代わる施設(例えば、市民交流センター、町民文化センター、コミュニティーセンター等)があって、そこであらゆる情報の収集・提供ができ、各施設間のネットワークのイニシャチブをとれることが可能なら、そこも核となることができる。

 ここでのネットワークは、多種多様な施設を結ぶものであり、情報の収集・提供、事業についての連絡・調整と連携・協力、広報・啓発活動の一元化などにより、住民へのサービス向上と、行政の効率化をめざすものである。

2.広域におけるネットワークサービスの核づくり進めること

 このネットワークシステムは、同種の施設間でネットワークをつくる場合と、 「○○地区生涯学習連絡会議 」といった組織をつくる場合が考えられる。

 いずれにしても、住民へのサービス向上と主体的な住民参加への援助が大切であり、互いに近隣市町村の施設利用や事業参加を大いに促すような体制づくりが望まれる。また、副次的には、情報の交換や、指導者の交流、共同・共催事業の企画等、行政上の効率化も期待できる。

3.県域におけるネットワークの核づくりを進めること

 この場合のネットワークは、基本的に同種の施設・機関、あるいは同時業を推進する使節・機関を結ぶ物であり、その核となる施設に要求される機能は、施設の種類によって異なる。

 例えば、リカレント教育推進の核(センター)があれば、大学、研究所、企業行政(商工労働部、教育委員会)等がネットワーク化され、その核は、連絡・調整を主な機能とすることになる。

 また、ボランティア活動の支援・推進の核は、あらゆるボランティアについての情報をネットし、県民に対する啓発も含めた、徹底した情報提供を第一の機能と考えるべきである。

 各分野において、こうした県域でのネットワークの核づくりが進み、有効に機能していくよう期待するものである。

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