平成14年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書

21世紀の新しい社会教育のあり方について

社会教育行政と社会教育関係団体,NPO,ボランティア団体,
民間教育事業者等との連携・促進のために〜

第7章 今後の社会教育行政のあり方と具体的施策について
 これからの社会教育行政は、従来の社会教育関係団体の枠を越えた、必ずしも教育の事業を主たる目的とはしない、様々な民間団体ともパートナーシップをつくり、地域づくりを促し、住民の学習活動ばかりでなく、社会参加をも支援・奨励しようとするのが平成10年の国の生涯学習審議会の答申の趣旨である。

 NPO、ボランティア団体は民間であるからこそ活力を持ち、さらなる活性化への行政支援のあり方は、財政支援においても、情報提供においても、連携・協力においても、今までと違った新たな理念に立たなければ、逆に活力を損なってしまう恐れがある。これは、公の支配に属しない団体だったものが、公の支配に属することになることが危惧されるからである。

 我が国の教育行政は中立性を守るために、一般行政からの分離独立制度をとっている。施策と啓発は、首長部局で、教育は教育委員会でとのすみ分け論もあるが、生涯教育の理念のもと、社会教育行政が生涯学習社会の構築の中核的な役割を担う時代においては、社会教育行政が教育の独立性と尊厳性を守りながら、教育関係以外の様々な団体や行政機関ともパートナーシップをとりながら生涯学習社会構築へのリーダーシップをとる必要がある。

 そのためには、社会教育の指導者養成のための社会教育センター的な専門機関の設置や、公民館を中心とした様々な団体間のコーディネート機能をもつ市民活動センター的な施設が必要となる。

 また、先の社会教育法の一部改正、学校教育法の一部改正では、生涯学習社会構築の観点、また、青少年健全育成の観点からも社会教育と学校教育が相互に協力し、連携していくことが大変重要であるとしていることから、新たな社会教育の展開は、学校教育との連携・融合が益々必要となる。

 このようなことから、先に述べた公民館における地域コーディネーター等の人的配置とともに、学校教育分野にも社会教育主事の有資格者を配置をするなどして、社会教育行政と連携を図り、地域の団体やNPO、ボランティア団体等とともに、体験活動の促進や家庭教育の充実につとめることが求められ、新たな社会教育推進体制の創造と整備が急がれる。

 このとから、社会教育行政は以下の点について、社会教育の体制整備と具体的施策を講ずるべきである。

1)県としての体制整備と具体的施策

■社会教育関係団体改革方策策定委員会等の設置

 社会教育関係団体の活性化のためには団体の組織や運営体制の見直しが必要となるが、その見直しには中・長期的な策定プランが必要である。そのために、団体の会員はもとより、新たに学識経験者等を交えた改革方策を策定する委員会等を団体が自ら設置し、幅広く団体の今後のあり方に関する提言を求めることができるように財政支援を行うこと。

■新しい教育活動展開のための社会教育施設の拠点の整備

1.既存の文化芸芸術会館の社会教育センター、市民活動支援センターとしての機能の整備

 社会教育関係団体、市民活動団体の自主・自立・独立の運営が可能となるように、自主的・自発的な活動の促進が図ることのできる活動の拠点となる場の整備が必要不可欠である。そこで、新たな社会教育施設の建設も視野に入れながら、既存の県立文化芸術会館(滋賀会館、長浜文化芸術会館、安曇川文化芸術会館、八日市文化芸術会館、水口文化芸術会館、草津文化芸術会館)の供用ができるよう検討すること。

2.公民館機能充実のための支援

 公民館が地域での社会教育施設の拠点として幅広い機能を持ちながら、地域の社会力の醸成の場として、また学社連携・融合の場として、さらには、まちづくりの拠点として社会教育関係団体、NPO、ボランティア団体等が有機的に連携が図れるようなコーディネート機能が必要である。そのためにも、公民館機能を拡充するため、公民館運営審議会等の活性化方策や地域コーディネーターの配置など、公民館が活動の拠点となるよう市町村に対する各種支援策を検討すること。

■学校教育における社会教育主事有資格者の全校配置

 生涯学習社会構築の観点、また、青少年健全育成の観点から、社会教育法の一部改正、学校教育法の一部改正が行われ、学社連携・融合の推進を図っていくことが大変重要な時期となっている。中でもこれからの学校教育においては、総合的な学習の時間において地域人材の活用や社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携が重要とされていることから、学校教育においても社会教育とのコーディネートを行うことができる社会教育の専門的知識・技能を持った社会教育主事有資格者の教諭を全学校に配置し、社会教育との連携に努めること。

■マネージメント能力を兼ね備えた社会教育指導者の養成

 行政は、総合的な地域コーディネーターを養成するために、コーディネート能力、マネージメント能力の向上をはかる研修講座の実施や、新しい時代における公民館職員養成講座、マネージメント講座を開設し、指導者の資質の向上に努めること。

2)県・市町村としての体制整備と具体的施策

■市民活動団体の社会教育関係団体としての登録制度の創設

 NPO、ボランティア団体等の市民活動団体に対し、今後、生涯学習・社会教育に関わる社会教育関係団体として連携・支援をしていくことが必要であり、活動拠点となる公民館等の社会教育施設や、市民活動支援センター等の供用・利用ができるように市民活動団体を社会教育関係団体として登録する制度を創設すること。

■社会教育関係団体と市民活動団体の連絡協議会の設置

 社会教育関係団体は、補助金交付団体として活動の公共性が求められているため、広域的な事業の展開が地域ベースで実施されている。一方、NPO、ボランティア団体等の市民活動団体は、特定の目的と内容をもつ団体であるため既存の団体より専門的である。社会教育関係団体と市民活動団体それぞれが持つ特徴を生かすため、情報交流を中心とする連絡協議会の立ち上げやそのための財政支援を行うこと。

■補助金等について

 補助金に対する扱いについては、社会教育法第13条の規定にあるように「地方公共団体が社会教育関係団体に補助金を交付するときは、教育委員会は社会教育委員の意見を聴いて行わなければならない。」との規定に従って、交付されるべきである。このことを考えると、NPO、ボランティア団体等の市民活動団体が、生涯学習・社会教育のための公益に活動する社会教育関係団体と認められるものであれば、財政支援や助成についても、既存の団体と同じように扱われるよう検討することが必要である。

 しかしながら、昨今の財政難において、今後益々補助金が削減されるであろうと考えるとき、また、団体の自主・自立・独立性を高めていくときに、団体の自主的な経済運営を目指すように補助金の依存度も、徐々に少なくすることも必要である。今後は、補助金というシステムと並行しながら、支援という形での委託事業とか、提案公募型による補助金の配分等、補助金の有効活用が図れる新たなシステムの研究開発を検討すること。

■民間教育事業者との連携推進

 教育行政機関と民間教育事業者が連携することは、?@互いに情報交換を行うことにより、多角的な住民の学習ニーズの把握により優れた事業の企画に役立つ、?A事業内容が充実し、住民の多様な学習ニーズに応えられる、?B様々な広報媒体を利用して、広く住民に事業を周知できる、?C行政と民間教育事業者の学習情報を体系的・総合的に収集整理することで、住民に提供できる学習情報が豊富になる等、多くの効果がある。しかし、民間教育事業者が教育行政機関との連携を進めようする際に、行政のどの窓口に相談をすればよいかわからない場合があるので、教育行政機関は民間教育事業者との連携の窓口を定めて、広く民間教育事業者への広報ならびに相談等を受け付けられるように体制整備を図ること。

■教育行政、社会教育関係団体、NPO、ボランティア団体、民間教育事業者等連携事業の開催

 教育行政機関、社会教育関係団体、NPO、ボランティア団体、民間教育事業者等のそれぞれの役割や事業をアピールする生涯学習フェスティバル等を一堂に会して開催し、生涯学習・社会教育の振興・発展に寄与できるよう、協力・連携のあり方を探るための事業の展開を図ること。

3)市町村としての体制整備と具体的施策

■地域コーディネーターの配置

 公民館の果たす役割が重要となることから、社会教育行政は、公民館がコーディネート機能の充実が図れるよう、社会教育の専門職としての地域コーディネーターを配置すること。

 とくに、行政職における地域コーディネーターは人事異動により職務の継続性が保てないので、社会教育の経験をもつ民間人の登用により、継続した職員の配置と専門職としてのスタッフの体制整備を図ること。

■市民活動支援センター等の設置

 県域のNPO活動等に対しては、「淡海ネットワークセンター」がコーディネート機能の役割を担っているが、市町村域においても、前述の県としての体制整備の事例にもあるように、市民活動支援センター等を設置し、自主的・自発的な活動の促進を図れるよう支援を行うこと。

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