昭和60年12月 滋賀県社会教育委員会議報告書

青少年健全育成のための学社連携の具体的方策について
(建議)
はじめに
 青少年期の人間形成にとって、家庭・学校・地域社会のもつそれぞれ独自の教育機能が大きな役割を果たしていることは今更言うまでもない。

 青少年にとって家庭は心のやすらぎの場であり、いこいの場である。また、基本的な生活習慣を身につける場であり、兄弟や父母、祖父母とのふれあいにより、培われる愛情と信頼と感謝の気持ちが、やがて成長するにつれて他人への思いやりとなって広がっていくという人間の心情と道徳心の基盤を形づくる場でもある。

 ところが、今日、核家族化、少子家族化、都市化、情報化、職住の分離など、青少年を取り巻く社会環境の急激な変化により価値観が多様化し、各種の情報がはんらんする中で、子育てに自信を失い子供に基本的な生活習慣さえ身につけさせることができないという親も出てきた。また、高学歴化社会の中で少子家族化も手伝って過保護や過干渉に陥ったり、逆にしつけを軽視し放任するような傾向も現れてきた。このように家庭の教育機能は従来に比べて低下してきていると言える。

 青少年にとって学校は、専門職である教師により、組織的・計画的に営まれる教育機会を通して、自ら考え、正しく判断し、個性豊かでたくましい人間を形成する場であり、生涯に連なる知性、人間愛に根ざす個性、活力のある体力を身につける場である。

 近年、高等学校が義務教育化し、大学進学率も高くなって、学校生活を送る期間が長くなり、多くの青少年には社会の一員としてすすんで行動しようとする態度の形成に遅れがみられるようになってきた。また、先に述べた家庭の教育機能の低下や、学歴偏重の社会風潮から学校生活に適応しにくい青少年が出てくるようになってきた。

 青少年によって地域社会は、気軽に集まってさまざまな人間的交流を図ったり、「むら」や「まち」の共同作業や、地域の運動会等に積極的に参加したりして、協調性や社会性を身につけ、郷土愛をはぐくむ直接体験の場である。

 ところが、高度経済成長の中で職場と住居が分離されて、地域社会の多くの成人が男女ともに働きに出かけるようになり、職場中心の生活になって地域活動の機会が少なくなってきた。また、青少年にとっては、都市化による遊びの場の減少、少子家族化による友達の不足、マイコン等の個人的遊具の普及、学校生活が長いことからくる地域活動への不参加など、新たな問題が生まれてきて、かつての地域における教育力が次第に後退してきている現象も見られる。このような状況の中で、人々の心の中に地域の連帯意識が薄くなり、社会規範もあいまいになって、青少年の健全育成に必ずしも望ましいといえない状況が現れてきた。

 以上、家庭・学校・地域社会の変化の中で、今日、特に「いじめ」「登校拒否」「家庭内暴力」「校内暴力」「万引き」等に代表される病理現象が現れて大きな社会問題となっている。

 このような状況のもとで、人間性豊かな青少年を育てるためには、今何が一番必要なのか。

 本会議では、家庭・学校・地域社会がそれぞれ独自の教育機能を従来にもまして一層発揮するとともに、これらがお互いに連携・協力をして課題解決にあたることが何よりも必要であり、このためには、学校教育と社会教育との連携が極めて重要な意味をもつことから、なぜ必要か、どう影響しているかといった本質にかかわる総論部分は社教審をはじめとする各種の答申建議等に述べられているので簡略化し、今回は特にその結節点にあるPTA活動、青少年活動、教師の研修の三つの視点を設けて、その具体的方策に絞って検討することとした。

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