昭和60年12月 滋賀県社会教育委員会議報告書

青少年健全育成のための学社連携の具体的方策について
(建議)
1.PTA活動を通して
 PTAは青少年の健全な成長を図ることを目的として、父母と教師とが互いに協力して家庭や学校における教育について理解を深め、その教育の復興について努めるとともに、青少年の校外における生活の指導、地域における教育環境の改善・充実を図るため、会員相互の学習等を行う社会教育関係団体である。

 家庭や学校における教育の理解とその振興については、家庭と学校とがそれぞれ教育の責任を分担し、密接な関連を保ちながら青少年の指導が十分に行われるよう、父母と教師が素直に意見交換をして、家庭や学校における指導の方針等について相互の理解を深めることが必要である。

 また、青少年の校外における生活指導については、健全な遊びや規律ある集団活動などを通して青少年のすこやかな発達を促すよう、適切な指導を行うことや、青少年団体等への加入を促進するとともに、健全な育成を助ける役割を果たすことが期待されている。

 さらに、教育環境については、 青少年が生活する地域環境を点検改善し、また、青少年の校外における生活の安全を確保することが重要である、たとえば、交通安全対策、有害図書の自販機撤去、危険地域の排除や遊び場の確保などを促進する活動など、PTAの当面する課題は極めて多い。一人一人の親や教師の力ではとても解決できないような問題について、ともに学習をすすめて会員の意識を高め、他のPTAや社会教育関係団体とも協力して問題の解決に努力することが望まれている。

 ところで、現実のPTA活動を見てみると、PTAの運営や活動の原点が正しく理解されないままに、たとえば、平日の授業時間帯に総会や研修会が開かれたり、個人の趣味活動やバス旅行にポイントが置かれたり、授業参観には出席してもそのあとの総会や研修会には参加しないということもあったりして、青少年の健全な成長を図るための父母や教師の学習活動や社会活動等がまだ十分に行われているとは言えない状況が見うけられる。また、一部に教師側の主導性が強いPTAもある一方、一般教師にPTAについての理解が浅いこともあって、PTAは父母だけの団体であるかのような低い会員意識が見うけられ、教師の出席参加が少なかったりして、父母と教師がお互いに成長するものという認識に欠けるところも見うけられる。

 このような現状を打開する方策を次の四点に絞って考えてみたい。

(1)学級・学年PTAでの研修活動を基盤とする
 青少年の健全育成にとって、父母と教師が互いに話し合える機会を多くもつことが大切 なことである。このためには、研修会のもち方の工夫も必要で、子供の成長過程をスライドにおさめ、それを見ながら話し合いを進めている学校もある。

 特に、家庭でのしつけ、友達関係、いじめ、部活動をしない生徒の日常生活のあり方など家庭・学校・地域社会における身近な問題を取り上げて学習会を開いたり、また、学級の身近なことがらについて調査をしたり、その調査に基づいて学級・学年PTAで討議し、PTA全体へと積みあげて、その解決策を討議したり、学級通信を発行して生徒の日常生活を知らせたり、生徒、父母、教師の交換日記を続けたりするきめの細かい活動は、何よりも担任とつながりの深い学級・学年PTAでの学習活動を基盤として進められるべきである。

(2)青少年の発達段階に即応した研修活動を充実する
 PTAの研修会では、全校の会員が一同に集まって講演を聞いたり、形式的に質疑を交わしたりすることが一般的に多い。

 ところで、青少年は身体的にも精神的にも学年によって発達段階が異なり、学年進行につれて成長を示すものである。したがって、教師の関心は指導している当該学年の児童・生徒であり、父母は自分の子供であることから、開きのある学年を十把一絡げにして研修会を開いたり、講演を聞いたりすると、時には焦点がぼやけてその成果があがりにくい。そこで、学年の発達段階に即応した研修課題を設定して計画的系統的な学習を父母と教師とがともに工夫し、実践する必要がある。

(3)家庭・学校教育を父母と教師が相互理解する
 家庭教育の中心は、しつけや基本的生活習慣の形成、心豊かな情緒の育成など徳育を主たるねらいとしている。このように、互いがその教育の役割と責任を明確にするとともに、密接に連携を保ちながら日々の青少年の指導が推進されるべきである。

 ところが、家庭においては、父母が学校の教育方針や内容を十分理解しないままに、学校や教師に不信を抱き、中には子供の前で不用意に教師批判をするような事実もある。

 一方、学校においては、父母が一番知りたがっている学級担任の考え方や学級担任の考え方や学級経営の方針等、身近な時間での懇談会が少なく、学校全体を一まとめにした会合が形式的に行われて興味がうすれ、出席する会員の少ないことや出席者の固定化が見られたりして、親の考え方を十分理解しきれない状況が見られる。

 そこで、父母と教師がお互いに家庭・学校教育を理解する研修活動を推進して、互いの不信を払拭し、父母は教師によって、教師は父母によって磨かれるという敬虔な気持ちと強い連帯感に支えられたPTA活動を展開する必要がある。

(4)部活動における父母と教師との定期的な連絡懇談会を開催する。
 学校において計画する部活動は、放課後に学年や学級の所属を越えた仲間や先輩との触れあいを通じて人間関係や多様な興味、関心を深め、その個性を発揮する教育活動である。この活動は、自発性自主性を生かして行われる教育活動として学校教育における人間形成に大きな役割を果たしてきた。

 ところで、部活動の現状を見ると、ややもすると一部では所属の目的が薄れ、対外試合で勝つことの指導が先行して、生徒に曲がった優越感を植えつけていることも往々にしてみられる。また、学年を越えて異様とも思えるほど、先輩後輩が命令服従的な上下関係で結ばれ、強固な仲間意識があるものの排他的な一面も出てきている。さらに、2年生の後期には進路の問題とかかわりをもって退部が見られたり、3年生の夏休み以降は部活動をやめさせているのが実情である。一方、親の方にも年間を通して行われる早期練習や帰宅時刻の遅いこと、土・日曜日にも練習に出かけることから発育途上にある青少年の健康や多くのことを経験して身につける全人教育の必要性についての不安を抱いていることも少なくない。反面、親の中には部活動に子供を預けておけば非行にはしることがないと信じ、安心するといった安易な考え方も見うけられる。

 このような行き過ぎ、無理解、不安、誤解、連絡不十分などの現象を打開するためには、教師間の共通理解を図り、教師(指導者)が活動のあり方を今一度点検するとともに、家庭と学校とにかかわる課題については父母と教師(学級担任と部活動の指導者)とが定期的に連絡会を開き意志疎通を図る必要がある。

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