平成3年11月 滋賀県社会教育委員会議報告書

生涯学習社会における指導者養成の在り方について(建議)
2 本県における指導者の現状と問題点
(1)指導者の種類とその役割(資料1)
 指導者の現状やその確保・養成の在り方を考えるうえで、あらかじめ、指導者を (1)民間指導者、(2)行政指導者、(3)民間有志(ボランティア)指導者 の3つに大別し、さらにそれぞれを2つずつに分類することにした。
1.民間指導者

 民間指導者は、各種団体(グループ)を指導する「1.団体指導者」と、学級・講座・講演会等で指導する「2.個別指導者」とに分けることができる。

  1. 団体指導者には、少年、青年、成人・高齢者の各団体指導者があり、それぞれを団体の運営、指導・助言にあたる外部指導者と、団体の一員としてともに活動しながらリードする内部指導者とに分けることができる。
  2. 個別指導者は、学級・講座・講演会等で専門的知識・技術の指導をする専門的指導者と、特定の分野についての技能を有する実技指導者を行う特定指導者とに分類できる。

2.行政指導者

 行政指導者は、「1.専門的指導者」と、「2.委員会等指導者」に分けられる。

  1. 専門的指導者には、行政の事務局にあって社会教育の学習計画の企画立案や専門的な指導助言を行う社会教育主事や社会教育指導員等がある。これらの指導者は、各種社会教育施設や福祉・厚生関係施設においても設置されている。
  2. 委員会等指導者とは、行政からの委嘱や任命を受けて住民の意向を行政に反映させる公民館運営審議会委員等と、直接指導助言にあたる少年補導員等と、さらに、これら両者の役割を兼ね備えた体育指導委員や社会教育委員等である。

3.民間有志(ボランティア)指導者

 民間有志指導者は、「1.学習ボランティア」と「2.施設ボランティア」とに分けられる。

  1. 学習ボランティアとは、地域や職場にあって自主的な学習活動を援助したり学習条件を整えたりするなど「世話人」的存在である。公民館などでの学級・講座等の修了者がなる場合もある。
  2. 施設ボランティアとは、公民館や資料館などの公共施設にあって、その施設が行う行事・事業の援助を行うボランティア指導者である。その活動は、単なる「お手伝い」ではなく、自己の学習の場として位置付けて、事業の企画運営にかかわるようになってきている。
(2)指導者の現状と問題点
1.民間指導者について
  •  一人の指導者が、複数の公民館の学級・講座の講師を兼ねざるをえないこともあり、指導者の絶対数が不足していると考えられる。地域には、優れた指導者がまだまだ多数埋もれていると予想され、新たに指導者を発掘していく余地は十分にあると思われる。
  •  人々の学習意欲が高まり、学習ニーズが多様化、高度化するに伴って、指導者には、それらに的確に対応できる資質が望まれるようになってきているが、現状は、指導者が固定化・高齢化し、そのことによって、学級・講座、各種研修会や学習内容にマンネリズム化を招くおそれも出てきている状況にあるといえよう。

2.行政指導者について

  • 社会教育指導者として公的に制度化された資格を要求されるのは、社会教育主事、司書、学芸員等少数の種類に限定されている。そのため、社会教育全体としての指導力不足は否めない。
  • 社会教育主事等の専門指導者が少なく、兼務発令をされている場合が少なくない。公民館、図書館、博物館、その他文化施設、および体育施設等においても、同様に専門的指導者が十分とはいえない状況にある。
  • 社会教育では、学校教育のように一生涯その指導に携わる人は、極めて少なく、そのため社会教育の推進が断続的になったり、一貫性に欠けることになったりするおそれもある。

3.民間有志(ボランティア)指導者について

  • 特に社会教育分野においては、いわゆる「ボランティア」としての人材把握ができていないのが実状である。
  • この種の指導者の活躍できる場が、準備、開発されていないため、志ある人も地域に埋もれたままであると思われる。
  • 「いつでも、どこでも、だれでも自由意志に基づいて学習できる」生涯学習社会は、「助け合い、教え合い、学び合う」ボランティア精神によって支えられる面が多くあり、その意味からも、この種の指導者に寄せられる期待は、ますます大きくなるであろう。

4.指導者養成・研修等について

  • 学校教育においては、「総合教育センター」で学校教職員に対する研修の場を計画的に設定し、その時間も十分保障していることに比べて、社会教育ではそうした施設はなく、研修が単発的になり、質・量ともに不十分であるといえよう。
  • 指導者の資質を高める一つの方法として、種々の調査・研究活動は欠かすことのできないことである。そこで、こうした調査・研究活動が可能な施設や機関の整備が望まれるところである。

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