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平成8年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書 『学校、地域社会がともに取り組む生涯学習のあり方』〜子どもの体験をどう育てていくか〜 |
■子どもの体験学習をどうすすめるか
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生涯学習の出発点である心の豊かさを求めることや、自ら考え、学ぶ意欲は、家庭や子どもをとりまく地域社会をとおしても培われるものであり、地域社会における様々な体験という土壌があってこそ、課題に対する問題意識をもつことができ、理解も深まり、また、問題解決の能力も高まる。
しかしながら、近年の社会状況の急激な変化のなかで、本来、家庭で行われるべきしつけや、地域社会で培われるはずの子ども達の様々な体験が減少しており、自発的行動や社会性、忍耐力、感性の不足等の問題が指摘されている。今日の青少年の様々な問題行動のひとつの要因としても、この体験の欠如があげられよう。 こうしたことからも、今、学校、地域社会が持つそれぞれの特色と教育機能を再認識しながら、子どもの自然体験や生活体験、社会体験の学習を、両者でともに創りだすことが求められている。 |
1 体験学習を進めるにあたり
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学校教育の場においては、とかく知識の量を増やすことに偏りがちであった今日までの学習のあり方を改め、それぞれの子どもの個性を尊重しながら、創造力、判断力、表現力などを育む教育への転換が求められている。そのためには、これまで行事を中心として実施してきた自然体験やボランティア体験等に加えて、地域の実態や生活に密着した進め方が大切であり、社会教育関連施設の活用や福祉施設との交流、地域の産業についての実習、見学等、教科学習の中に積極的に体験を組み入れた学校教育の推進が必要である。
社会教育の場においては、学校教育の体験的学習との関連を念頭に置きつつ、低学齢期から豊富な体験ができる様々な場を設定していく必要がある。そのためには、今後、学校や関係機関と十分連携を図ることや、人的・物的諸条件の整備につとめることが急務である。 このような体験活動は、人間としての根源に係わる命の尊さや、ひとを思いやる豊かな心、豊かな感性、自主性などを培うとともに、学ぶ意欲を一層高め、確かな問題解決能力の涵養を図るものである。単に楽しい体験をさせるだけで生涯学習の素地が養われるというものではなく、組織立てた系統的な体験活動の組み入れが必要である。 |
2 ボランティア活動をとおして
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ボランティア活動は、基本的には家庭での幼少期の手伝い等の体験が基本となってボランティア精神が培われていくものであろう。子どもの体験活動の充実を図るうえで、ボランティア活動は今後大きな部分をしめることはいうまでもない。知識・理解のみにとどまる研修、教育課程の一環や単位取得目的といった機会は、ボランティアへの出会いや取りかかりには有効であるが、ややもすると依存型や一過性に陥りやすく、そこで、次のような方策が望まれる。
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3 環境学習をとおして
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環境保全は全人類の課題であり、特に琵琶湖の水質保全等については、本県における学校、地域社会がともに取り組まなければならない課題である。環境学習においては、自然体験が特に重要な学習の場となるものであり、大人と子どもが自然体験を通じて、環境保全や自然との共生の大切さを学んでいく必要がある。
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4 社会教育施設との連携をとおして
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公民館、体育館、文化ホールなど、社会教育施設は地域の生涯学習の拠点として、その利用は年々増加しているが、特に公民館においては、熟年層に限られたり、成年男性や若者の講座への参加の減少など、多くの課題も抱えている。地域活動の拠点としての公民館の役割を考えるとき、図書館の持つオープンなイメージにも似たあり方が求められる。
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5 地域活動をとおして
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近年の社会生活の変化は著しく、人と人とが自然なかたちで交わり合って生活していたものが、次第に個人志向となり、本来の人間のつながりが乏しくなってきた。この傾向に比例して子どもの生活体験も乏しくなり、人間関係が保ない、相手の立場に立って物事を考えられないなどの今日的課題があげられる。
地域の中での子ども自身の存在感、連帯意識を高めるための体験活動の創造は、青少年の健全育成や、住みよいまちづくりを進めるという観点からも意義は大きい。
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6 体験学習の推進のためのシステムづくり
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家庭・学校・地域社会において、それぞれ多様な体験学習が進められているが、今後は、推進会議を核として、プログラムの開発、指導者の発掘、情報の整備、事業の日程調整など、体験学習の系統的推進を図るための地域における体験学習推進連携システムを構築する必要がある。
また、構築されたシステムにおいて、実践された諸々の体験活動(地域活動等)を広くPRすることも大切である。 |
■おわりに
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滋賀県社会教育委員の会議では、今回、滋賀の社会教育、あるいは生涯学習、教育全体を考えるうえで、大きな課題となるものを取りあげ、特に、子どもの体験のあり方に焦点をしぼりながら、それぞれ自由な立場から議論を進めてきた。
こうした議論を経て、ここに「報告書」としてまとめることとなった。本書がこれからの社会教育や学校教育、あるいは、地域、職場、家庭において、様々な活動に取り組むうえで参考になればと願うものである。 |