平成14年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書

21世紀の新しい社会教育のあり方について

社会教育行政と社会教育関係団体,NPO,ボランティア団体,
民間教育事業者等との連携・促進のために〜

第3章 社会の変化とNPO
 社会教育は、地域住民による自主的・主体的な実践的学習活動を基礎として行われるものである。こうした中で、平成10年12月に成立した「特定非営利活動促進法(NPO法)」の施行以降、国内各地域において新しくNPO法人が約5,000団体以上も誕生しており、新たな公共活動を担う市民セクター(行政、企業に続く第3のセクター)として、注目されはじめている。

 このように考えると、21世紀の生涯学習社会の実現を展望するとき、社会教育を推進し、地域の学習活動を支援しているNPOの果たす役割は極めて大きく、それぞれの地域で社会教育のさらなる推進を図り、生涯学習社会を実現していくためには、社会教育行政の拡充はもとより社会教育を推進するNPOの積極的な活動が期待されている。

 このようなNPOの誕生の背景には、主に次の4点が考えられる。

1)NPO誕生の背景
 ボランティア活動に対する国民一人ひとりの関心が高まり、自らが社会と多様な接点をもつことや、また、職業生活以外の場面で、自らの社会的役割を演じ、他者との関わりの中で自らの自己実現を図ることへの欲求の高まりが見られること。
 生涯学習活動の広がりにより、学習成果を社会に還元したいとする人々のニーズが高まり、社会参加という形の学習活動の気運が盛り上がりつつあること。
 住民は、多くの課題を「自らが解決し得る課題」あるいは、「自らが解決するための努力をしなければならない課題」として捉えなおし、対行政というスタンスが、自らの課題として主体的に取り組もうとする意識が芽生えてきたこと。
 行政だけでは社会的、公共的な課題をすべて解決することはできず、それを実現するためには、社会の様々な機関が連携・協力して対応する必要があるという認識が社会の各分野で広まってきたこと。
2)市民活動団体と社会教育関係団体の関係
 このような背景のもとで生まれてきたNPOは、ポジティブな社会貢献の活動へと盛り上がりつつあり、新たに社会教育関係団体と見なせるものもできている。しかしながら、NPOも未だ発展途中であるがゆえ、未成熟な面があることも事実である。

 一般的に、組織は、歴史が長ければ長い程、硬直化が進むものであり、住民に応えるべきスピィーディーでタイムリーな事業の展開は難しくなる傾向が見られ、その意味では市民活動団体も長いスパンで見ると、社会教育関係団体と同様の命題をもつものと考えられる。

 しかしながら、行政傘下でないこと、組織が柔軟なこと、また学習形態が多様で活動プログラムが豊富なことなどにより市民からの信頼を得てきている。このことは、これまでの社会教育関係団体の蓄積された経験と組織力、新しい発想で取り組むNPO、ボランティア団体等の市民活動団体とが連携できれば、生涯学習社会の実現に向けて双方にメリットも生まれ、さらなる団体活動の進展と活性化が期待できる。

 こうした中で、社会教育関係団体と、新たな活動団体としてのNPO、ボランティア団体等の市民活動団体との特性や役割の違いを、明らかにしなくてはならない。

 また活動の拠点となる公民館等の社会教育施設の活用や利用のあり方、さらには市民活動センターとなる新たな社会教育施設の体制・整備を図りながら、社会教育関係団体のあり方そのものを見直す時期にきていることも事実である。

3)市民活動団体と社会教育関係団体の特性

 社会教育関係団体と市民活動団体は、一般に下表のようにな特性があると考えられる。

 
社会教育関係団体
市民活動団体
活動エリア
限定している
比較的フリー
活動分野(内容)
生活上の全てをカバーしている
(行政と似ている)
活動目的や内容が特化している
(得意専門分野がある)
組織構成
市民としてのコモンセンスのもとに入会し、地域社会を構築している
市民の自由意志で組織をつくる
組織の性格
活動の無償性が強く、組織力は比較的強い
無償性を原則とするが、組織は多様でマネジメント能力が求められる
組織の運営
組織の永続性は強い
組織の永続性は難しい
行政との関係
行政と連動性が強い
行政とは、独立・対等な立場であることが基本

 このように社会教育関係団体と市民活動団体の双方の特性を認識しつつ、事業において競合するこなく双方が役割分担と互いに補あう関係の構築が今後益々大切になりうることは必然である。

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