平成14年3月 滋賀県社会教育委員会議報告書

21世紀の新しい社会教育のあり方について

社会教育行政と社会教育関係団体,NPO,ボランティア団体,
民間教育事業者等との連携・促進のために〜

第5章 これからの公民館はどうあるべきか
1)公民館の機能
 これまでの公民館は、ともすれば要求課題の学習機会の提供場所として講座や同好会、趣味的サークルの貸館的機能が強く、社会的課題(必要課題)に関する自主事業があまり展開されてこなかった面がある。

 結果としてこれまで中高年を対象としてきたともいえ、高齢社会の進展とともに益々その傾向が強くなると思われる。前向きに捉えると、今後、公民館には中高年の生涯学習の場として、その経験・能力を活かし、人々が自主的・主体的に地域の多様な課題を認識して学び、それを解決する「市民活動センター」的な機能が期待できる。また、青少年の社会性や豊かな人間性を育むためにも、青少年の居場所として、さらには体験活動の場としての機能も期待される。もちろん、新たなNPO、ボランティア活動を行いたいとする住民が集まる場としての機能も併せてもつ必要がある。

 今後は公民館が地域での社会教育の拠点として幅広い機能を持ちながら、地域の社会力の醸成の場として、また、まちづくりの拠点として、社会教育関係団体、NPO、ボランティア団体等が有機的に連携がはかれるようコーディネート的機能を確立する必要がある。こうしたことから今後の公民館機能の充実を図るためにも、公民館職員である公民館主事には、社会教育の専門職である社会教育主事を充てる必要があり、社会教育活動をコーディネートする人材の配置は公民館の活性化に欠かすことができない。

2)公民館運営審議会等の活性化
 今日までの公民館は、既存の社会教育関係団体や公民館に所属するサークルや活動団体を優先的に利用に供し、NPO、ボランティア団体等の市民活動団体には新規に利用を許可しない現実があった。これからの社会参加の多種多様なあり方を見るときに、また、パートナーシップにもとづく協働の実践をはかるためにも、既存の社会教育関係団体のみならず、生涯学習・社会教育に関わるNPO、ボランティア団体等も視野に入れ、公民館の使用や運用について協議することが必要である。

 また、こうした公民館の運営については、これまで社会教育法によって、公民館運営審議会の設置が義務付けられていたが、その機能は時代のニーズに合わない状況にもある。その要因には、公民館運営審議会委員が社会教育委員と兼務をすることが多く、公民館を利用する立場からの観点で審議が行われてこなかったことが考えられる。先の社会教育法の改正で、公民館運営審議会の設置義務が廃止されたが、これは地域の実態に応じた形で住民意志を反映させるため、公民館運営審議会あるいはそれにかわる審議会等の設置により会議の活性化を図ることをねらいとしており、今後は、幅広い様々な人からの委員の登用により、公民館の新たなあり方をさぐる必要がある。

3)公民館の活性化のために
 今年度、国のIT推進戦略の一環として、公民館を中心に住民に対するIT講習が実施された。このIT講習は、住民のニーズも高く、次年度以降も引き続きIT講習の要望があり、公民館の自主事業として継続開催される運びとなっている。これを契機として、今まで公民館に来館しなかった住民が、公民館に出向くようになったことは、公民館をアピールする好機であり、公民館の活性化が期待できる。

 公民館は、貸館業務に終わらず、まちづくり、人づくりのための活動拠点となるよう、また、地域の課題や現代的な学習課題の飛躍的な解決のために、団体間をクロスさせるような交流会を定期的に開催するなど、市民活動団体等と連携した効果的な事業の展開が大切であり、そのためにもコーディネート機能の確立が必要である。

 さらに、全県の公民館にパソコンが配置されたことをきっかけに、今後、公民館のネットワーク化を進め、パソコンを活かした連携を構築していくことが大切であり、そのことが、県域的組織である公民館連絡協議会の活性化と公民館同士の情報提供がされると期待できる。

4)民間教育事業者と公民館の連携

 公民館の民間教育事業者への貸出は、平成7年9月の文部省生涯学習局長通知「社会教育法における民間営利社会教育事業者に関する解釈について」において、認められているところである。民間教育事業者への貸出は、単に事業者の要望に応えるだけでなく、公民館に多様な学習メニューが用意されることにより、住民のニーズに応えることにもなる。また、民間教育事業者の学習プログラムや運営方法等を参考にしていくことは、公民館の活動の活性化につながることが期待され、今後、教育行政機関は、民間教育事業者に対し、公民館施設を積極的に開放していくことを考えるべきである。

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