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昭和61年12月 滋賀県社会教育委員会議報告書 高等学校等公開講座の具体的方策について(建議) |
■2.(新規)高等学校等公開講座の具体的方策 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
(1)高等学校等公開講座の基本的考え
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今日、社会教育は人々の多様な学習要求に対応していくために各種の学習や体育・スポーツ活動、芸術文化活動など幅広く多様な学習機会を提供するよう求められており、生涯学習の観点からもその果たす役割は極めて大きいものがある。
本県では昭和57年より県内短期大学や公立高等学校の協力を得て、大学・高等学校開放講座や成人大学講座を開設し、一定の成果をあげている。 しかし、国の補助事業としての制約と現在、職業科高校においてのみ開設されている現状では、県民の学習要求の多様化、高度化に対応しきれていないという問題が指摘されている。そこで、次の二つの視点から公開講座の方策を検討した。 |
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ア 生活水準を広め、深める場として
生活水準の向上と、余暇時間の増加にともなって、文化、教養、趣味の活動や体育・スポーツ活動に対する要求はますます高まりつつあり、これらの活動を通して、仲間を得たり、心の豊かさを育て、健康を増進することは社会生活や文化の健全な発展のためにも重要な意義があると考えられる。 従来の開放講座の内容は職業生活、家庭・日常生活、趣味のそれぞれについての知識・技能の習得に関する学習が中心に展開されてきた。しかし、今後、これらの改善・充実に併せて、教養・芸術・芸能や体育・スポーツ、今日的課題等に関する学習機会の提供が強く期待されている。 このような県民の期待に応えるために学校開放を従来の職業科高校とさらに普通科高校にまで拡大して、地域社会に開かれたものにする必要がある。 そこで従来の開放講座で展開されてきた内容に加えて、語学や一般教養に関するもの、青少年問題、同和問題等の今日的課題に対処するもの、地域性・郷土色のあるものなどユニークな発想を盛り込んだ生涯学習の機会として県費単独事業「高等学校等公開講座」(以下「公開講座」と呼ぶ)の新設が望まれる。 イ 地域に根ざした学校として 「日常多忙な中できめの細かい指導を受けた」という受講者の声や担当した講師から出ている「受講者の学習に対する意欲的な姿勢に接した」・「生徒にも良い意味の緊張感が生じた」などの声に代表されるように、教える者と学ぶ者の間に好ましい信頼関係が生じている。 このように相互の信頼関係が受講者を通じて地域に波及していくことにともなって、地域住民の学校理解が深まり、地域の教育力の向上につながっているものと考えられる。 また、公開講座を開設する学校も、地域住民の生活課題を認識し、地域社会の経済、文化、自然、歴史等の教材化を図ることにより、生徒の地域への関心も高まるものと思われる。 一方、地域との交流は学校行事や生徒会活動、ボランティア活動等で積極的にすすめられているが、公開講座は生涯学習の場における学校、教職員、住民三者相互の交流といった側面も期待される。したがって、高等学校にとっても一方的な地域社会への奉仕でなく、地域住民と接することによって、高等学校の本来的な活動に大きな刺激を与えていくものといえる。 |
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(2)高等学校等開放講座の企画と運営について
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ア 講座の形態や運営等に関すること
(講座名) 講座の名称は開設する学校を付け、「○○○○学校公開講座」とする。さらにサブタイトルで講座テーマを示すようにする。 (受講対象者) 受講者は県民または県内に勤務する一般成人を対象とし、性別・年齢等に制限をつけないものとする。 (開設基準) 講座あたりの受講定員と学習総時間数については施設の収容能力、講座内容、指導体制等から一律に規定することなく、受講者はおおむね30人程度、学習時間は20時間程度とする。 (開設時期等) 開設時期は学校の運営や管理との関わりを十分に考慮し、実情に応じて決めることとする。開設日は受講者の希望(注2・下図)では土曜、日曜が望ましく、時間帯は午後、夜間が考えられ、受講者のニーズに沿うことが望ましい。 (注2)県民の生涯学習に関する意識と活動の実態調査(昭和57年 滋賀県教育委員会) あなたが、学習や活動に最も参加しやすい曜日を上欄に、時刻を下欄に、1つずつ選んでください。 (運営委員会) 公開講座を効率的に運営するために開設校ごとに運営委員会を設置する。構成員は開設校の教職員、地元教育委員会、PTA、受講者、その他関係団体等の代表が考えられる。役割として、講座テーマや内容、広報などの企画、日時の決定や教材費等に関することとする。 (開設手順) 公開講座の開設は次の手順が考えられる。
(受講費用) 教材費、実習・見学に要する経費等は受講者の負担とする。 (募集・広報) 募集案内の作成、各種機関、団体への依頼、申込み受付、受講者の決定等は学習活動の動機づけに大変重要であることから、きめの細かい手法と精力的な活動が望まれる。 特に公開講座の趣旨、学習内容等は多くの県民が理解して意欲的に参加できるよう周知・徹底に努める必要がある。 広報活動の例として次のものが考えられる。
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イ 講師、講座分野等に関すること。
(講師、場所) 公開講座を通して、学校と地域社会との交流を深めると共に高等学校教育の理解をはかるために、講師、場所は当該開設校の教職員と施設であることが望ましい。 しかし、学習内容や学習方法によって公開講座の趣旨が損なわれない範囲で外部から講師を招いたり、開設校以外の場所で行うことも可能である。 外部講師を招へいする場合は高等学校教育研究会や他の高等学校等からの派遣、あるいは地域における有識者の協力などが考えられる。 なお、高等学校教職員を対象とした講師の名簿を作成していくことが望ましい。 (指導方法) 年齢・知識・能力等の個人差に対応するために次の方策が考えられる。
(講座分野) 県民の生涯学習に関する意識と活動の実態調査の中の「今後の学びたい、または続けたいと考える学習や活動」(注1、前ページ)を参考にして講座分野とその内容および講座例を示すと表3のようになる。 表3 講座分野とその内容
(講座編成) 講座の編成に際して、従来の単独型に加えて新たに複合型や総合型が考えられる。地域や学校の特色を生かしユニークな講座を編成して魅力ある公開講座とする。 各編成を例示すると次のようになる。
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(3)開放講座との相違点
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従来の開放講座と(新規)公開講座の相違点は次の表4のとおりである。
表4 従来の開放講座と(新規)公開講座の相違点 |